こちらは『Instead of the Goodbye』の続きのお話となっております。
未読の方はこちらを読まれてからの閲覧をお勧めします。


準備オーケーだぜ!という方はスクロールでどうぞ
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なお、今回のお話は『死にネタ』を含んでおります。
そのようなものがダメ、苦手という方は悪いことはいわないので今すぐ画面を閉じてください。
閲覧後の苦情は受け付けませんのであしからず。




それでもかまわねぇ!!という方は更にスクロールしてどうぞ!
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「・・・・・京子ちゃん・・・・・・」
「ツナ・・・・・君・・・・・・?」

数ヶ月ぶりに私の前に現れた彼は、今にも息を引き取りそうなほど衰弱していた。
にもかかわらず、彼はその顔に微笑を浮かべていて。
あまりにも場にそぐわない彼に、私はなんて声を掛けたらいいのかわからなかった。





花束なんか、贈れないけど






「どうしたのっ!」

悲鳴のような声を上げて京子ちゃんが駆け寄ってきた。
そりゃぁそうだ。
悲鳴の一つだって上げたくなるだろう。
数ヶ月ぶりに現れた人間が腹からドクドク血を流し、貧血で顔を真っ青にしているんだ。
それが正常な反応だ。

あぁ、本当はこんな姿君には見せたくなかったんだけどな・・・・

無関係の世界で生きて欲しかったなんて、そんなわがままは言わない。
もうずっと昔から世の中の裏世界というものに巻き込んでしまっているのだ。
一度巻き込んだものをなかったことには出来ない。
でも、出来うる限り関わらせたくはなかった。
血と硝煙にまみれる世界なんて匂わせたくなかった。
彼女に逢うときは徹底的に裏社会の名残を排除してきた。
それをこうして、隠そうともせずあけっぴろげにしている理由、わかるかな?
覚えてるかな?俺との約束。

覚えていないなら、今俺を見たこと、忘れてくれると嬉しいな。

・・・・・俺はいつだって自分勝手だね。

今も昔も何も変われていない。
変わろうと頑張ったつもりだったけど、何も変われなかった。

こうやって俺はまた君に押し付けるんだ。

俺のプライドと、俺のエゴを。

「ツナ君!ねぇっ!ツナ君っ!!」
「・・・ぁ・・・・っ・・・」

言葉を紡ごうとしても、上手く喋れない。
血を流しすぎたのかもしれない。
頭がぼぉっとして視界がだんだん霞んでくる。
ふとすれば途切れてしまうそうな意識を何とか繋いでいられるのは京子ちゃんが身体をゆすり続けてくれるからだ。
唇を動かしても喉がヒューヒュー音を立てるばかりで声にならない。
口内がからからに乾いていた。
そのことに気づいた彼女は慌てて水を取りにキッチンに走り、ゆっくりと俺の口を湿らせてくれる。

「・・・・・・きょ・・・・・こ・・・・ちゃん・・・・・」
「ツナ君!喋れるっ!?」

ようやく音を発することが出来るようになった。
ゆっくりと、一つ一つ単語を発する。
ヒステリーを起こしたっておかしくないこの状況で、彼女は瞳いっぱいに涙を溜めて俺の言葉に耳を傾ける。

「約束・・・・・・覚えてる・・・・・・?」
「約束・・・・?」
「そ・・・・・・・俺たちが・・・未来に・・飛ばされた時に・・・・話した事・・・・・・・」
「・・・・・・・・・うん・・・・・・・覚えてるよ・・・・・・」
「・・・・・約束を・・・・」
「守るために私に逢いに来てくれた。・・・・・そうでしょう・・・・・?」

先を言わずとも、彼女は何故今俺がここにいるのかを理解してくれた。
俺は黙って頷く。

「・・・・・・獄寺君がね・・・・・教えてくれたの・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「ツナ君が瀕死の重傷を負ったまま姿を消したって」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから・・・・・ここに来るんじゃないかって、そんな予感がしてた」
「・・・・・・・・・・・・」
「そうじゃないといいって思いながら・・・・・・でもきっとツナ君は私のところに来るって思ってた・・・・・・」
「・・・・・・ごめん・・・・・」

謝って、それで何が変わるわけじゃない。
ただ、必死に涙を堪える彼女に掛ける言葉が見つからなかった。
だから俺は謝罪の言葉を述べる。
その言葉しか知らないロボットのように、何度も何度も繰り返す。

「・・・・・謝らないで・・・・・・」

ふいに、彼女が言葉をさえぎった。

「そんなことを言うためにここに来たんじゃないでしょう・・・・・・?」
「・・・・京子・・・・・・ちゃん・・・・・・」
「ちゃんと、言って」
「・・・・・・・・・・・・・」
「そうしたら私、きっと笑顔でツナ君を見送れるから」
「・・・・・・・・・・・・・」
「だから・・・・・言って・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ちゃんと・・・・・『さよなら』って、言って・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・お願い・・・・・・・・」
「・・・・京子ちゃん・・・・・」

やっぱり、言わなくちゃいけないんだよね。
解かってる。解かってた。
だから俺はここに来たんだもの。
でも、いやだなぁ・・・・・。
言いたくないよ。
お別れなんてしたくない。
君と離れるなんてしたくない。
約束なんてしなけりゃ良かった。
黙っていなくなれたらどれだけ楽だっただろう。
だけど、言わなかったらもっと後悔することもわかってる。
だから言う。
だから、約束を守るよ。
君を泣かせることになっても、約束は守るよ。

「京子ちゃん・・・・・・・・俺ね、遠いところに・・・・行かなくちゃならなくなったんだ・・・・・」
「・・・・うん・・・・・・」
「きっと・・・・・もう・・・・京子ちゃんとは・・・・・逢えない・・・・・」
「・・・・・うん・・・・・」
「だから、・・・・・君にさよならを告げにきた・・・・・・・・」
「・・・・・うん・・・・・」
「京子ちゃんのこと・・・・・俺・・・・すっごい好きです・・・・・」
「・・・・・うん・・・・・」
「だから・・・・・本当は言いたくなんてないけど・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・『さよなら』・・・・」
「・・・・・ありがとう・・・・・ツナ君・・・・・」

震える声で、彼女は言う。
私泣かないよ。
ツナ君はちゃんと約束を守ってくれたんだもの。
私も、ツナ君が大好きだから。
ツナ君のこと、信じてたから。
だから引きとめたりしないよ?
ちゃんと、見送ってあげる。
ツナ君が振り返らずに行けるように、ここで見送る。
私の最後の顔が泣き顔なんて嫌だから。
笑って、見送るね。

泣きそうな笑顔で、彼女は言う。

「ツナ君・・・・」
「何・・・?」


「いってらっしゃい」


たった一粒。
ダイヤのようにきらりと輝くものが、彼女の頬を伝った。

それを俺は涙だとは思わない。
だって彼女は泣かないといったから。
涙であるはずがなかった。

きっと、きらきら輝くそれは新たな旅立ちを祝う手向けの花束か何かだったのだろう。
拾い集めるように、救い上げるように。
そっと彼女の頬を伝うそれを拭い取った。

「・・・・うん・・・・・・いってきます・・・・」

俺の声はほとんど音ではなかったけれど、彼女は嬉しそうに、悲しそうに笑ってくれた。

「いつか・・・・・追いかけていくから・・・・・」
「・・・・・・・・」
「そこで待っててね・・・・・ツナ君・・・・・」

いつまでだって待ってる。
俺は君が好きだから。
ずっとずっと待ってる。

だから一つだけお願い。
俺のところに来ようだなんて、絶対に“頑張ったら”ダメだよ?

だって、俺はダメツナなんだ。
君に頑張られたら、俺が置いていかれちゃうよ。









バッドハッピーエンド、的な?(なんだそりゃ)

前々から書きたかったinstead of〜の続きのお話でした。

前作を書いたときから悲恋にすることは自分の中では確定でした(死)

なのであえて前作は明るく爽やかに終わらせました。

明るく終わらせといて次で落とす、みたいなね!

だけどツナ京の悲恋はお互い笑いながら別れられるところが魅力だと思ってます。

お互い無理はしてるんだけどね。

それでも相手を想って笑って別れる。

そういう関係の二人がものっそい好き。

2010/01/19





※こちらの背景は NEO-HIMEISM/雪姫 様 よりお借りしています。




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