「太子・・・・・好きです・・・・・・」
「・・・あっ・・・・・」
「好きで好きで好きでたまらないんです」
「い・・・・いもこ・・・・・?」

太子の体が揺らめいたように見えた。
それが動揺からなのか、それとも揺らめく炎のためなのか。
ちらちらと揺れる光は太子の顔を仄かに赤く染まっているように見せた。

可愛いな

きっと『可愛い』という単語はこんな年のおっさんに使う言葉じゃない。
そんなことわかっている。
わかっていた。

なのに

胸の奥底から湧き出てくる感情に抑えが効かなくなった。
きっかけはなんだったか。
覚えていない、というよりもわからない。
多分少しずつ少しずつ溜まった想いが僕の中で容量を超えてしまったのだろう。
もっとも、今となってはそんなことどうだっていい。
僕が太子を好きだという事実には変わりないのだから、そんなことどうだっていいのだ。
僕が居て、太子がいる。
それ以外に一体何が必要だというのか。

揺らめく太子をきつく抱きしめる。
逃げてしまわないように、きつくきつく。
相変わらず燭台の炎はちらちら影を揺らしていたが、抱きしめた太子はもう揺れはしなかった。
力を込めれば込めただけ、太子という輪郭がはっきりと感じられる。
ひとしきりその存在を確かめると、今度は手を這わせる。
頬から
首から
肩から
指先へ
ゆっくり辿る。
指先まで行き着けば、今度はもう一度頬まで辿り、続けて唇の形をなぞった。
お世辞にも柔らかなものではない。
かさかさのがさがさ。
それなのにどうして僕は今キスしたいと思っているのだろう。


簡単な答えだった。
僕は太子が好きだからだ。
ただそれだけだった。


「キス、させてください」

それは了承を求める言葉であって、ただの報告だった。
返事も待たずに両肩を掴んで二人の距離をぐっと縮めようとしたそのとき。


「あ・・・・や・・・・いもこ」


太子が初めて拒絶を表わす音を漏らした。
顔を俯け、両の手で僕の胸を押し返そうとする。
無理矢理押し込めることは簡単だったが、太子の意思を尊重して動きを止めることにした。

「なんですか?」
「明かり・・・・・」
「恥ずかしいんですか?」
「当たり前だろっ!」
「気にしないでください」
「気にするな・・・って、気にするよ!しまくっちゃうよっ!!」
「大丈夫です。すぐに気にならなくしてあげますから」
「っあ!?」

太子の手首を掴む。
小さく声を上げたが聞き流すことにした。
僅かに抵抗しようとしたが力なら僕の方が上。
そのまま壁に縫い止めてしまう。
それでも、太子は明かりに向かって手を伸ばす。
まったく。
そんなこと、無駄でしかないのに・・・・・。

「太子」
「やだ・・・・・明かり消して・・・・・・」
「明かりなんて見ないでください」
「・・・・・え?」
「僕だけを見ていればいい。あんたの目に映るのは僕だけでいい。
明かりなんて、そんなもの映さなくていいんです」
「いも・・・・・こ・・・・・?」
「あんたは僕だけを見ていればいいんです。僕もあんたしか見ませんから・・・・・」

首筋に一つ、口付けを落とす。
ちゅ、と音がした。

「ひゃっ!」

ビク!と体を震わせる太子。
たったこれだけなのにもう顔に朱がさしている。

(あぁもう、可愛いなぁ・・・・)

自分を抑えられる自信が無くなりそうだ。
ゆっくり、怖がらせないようにしてあげるつもりだったのに・・・・・・。
しょうがない。
これは僕が悪いんじゃない。
可愛い過ぎるあんたが悪いんだ。

「ねぇ、太子・・・・」
「な・・・なんだよっ!」
「僕に・・・・・全部見せてください」

そうしたら僕も全部見せて上げます。
僕がどんだけあんたを好きなのか、全部全部、見せて上げますよ。
だから。

ね?

恥ずかしがらないでください。
怖いことなんてなんにもないんだから。




揺れる炎だけが見てた







相互記念に【心太】の鳥居こおさんからイラスト頂きました!

性懲りもなくSS付ける許可も頂きました!

イラストの攻め顔妹子のお陰で、うちの妹子もなんだかちょっとは押しが強くなれた気がしないでもないような。

おおおおおお!なんておこぼれ!



鳥居さんは間違いなく天使かと。

じゃなけりゃ神か何かだよ(マジ顔)。



一度ならず二度までも美味しい思いをさせていただいて本当にありがとうございました!

これからも宜しくお願いしますね☆★



SSは鳥居さんのみお持ち帰りOKとさせていただきます。

よろしければ貰ってやってくださいな☆





鳥居さんのイラストだけで楽しみたい方は コチラ からどうぞ!

2009/10/13




※ウィンドウを閉じる※