ここから先は『織姫牽牛伝説』を軸にしたパロディになります。
忠実なパロでないことをここに宣言します!(おい)
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催涙雨〜後編〜
夜がまだ明けきらぬ時刻。
着々と突入の準備が進められる。
明かりもともさぬ薄暗い部屋の中は、扉の外の喧騒とは対照的に静まり返っていた。
私室の窓から見下ろす先には下界が映る。
時刻を同じくする下界にはポツリポツリといくつかの明かりが灯るだけ。
その光の中にあの人はいるのだろうか・・・。
両の手にグローブをはめる。
これを手にするのはずいぶんと久しぶりのように思う。
受け継がれる継承の証が手の甲に宿る。
平和を手に入れるための犠牲が刻まれた紅き証を示すかのように炎が灯される。
雲雀さん。
ごめんなさい。
貴方は優しい言葉を掛けてくれたけど、やっぱり俺の手はもう血に染まっていました。
どんなに奇麗事を言ったところで、汚れたこの手は隠せない。
だから俺はこの拳を振るってしまう。
貴方が守ろうとしてくれたものを、俺は自らの手で壊そうとしている。
ごめんなさい。
俺にはもう、貴方に逢う資格なんてないですよね。
貴方を裏切って。
貴方に反して。
貴方から離れた。
それでいいと。
思ったのに。
それがいいと。
思ったのに。
それなのに。
それなのに。
こんなにも心が痛むのは何故でしょう。
貴方を諦めれば諦めただけ、貴方が愛しくてたまらない。
貴方はもう、あの家に帰ってきましたか?
無事でいますか?
俺がいないと気づくのはいつですか?
怒っていますか?
悲しんでいますか?
俺を嫌いになりましたか?
どんな感情でもいい。
ただ貴方に逢いたい。
もう叶わない願いだと知っていても。
願わずにはいられない。
雲雀さんに逢いたいです。
雲雀さんの声が、聞きたいです・・・。
■■■■ ■■■■
「準備、整いました」
獄寺君の声が静かに告げる。
「これより、フォートフルトファミリー制圧作戦を実行する。先頭は俺が行く。後ろは頼んだよ」
「あぁ。任せとけって」
「援護は俺に任せてください」
「小細工は無し。力ずくの正面突破でいく」
言葉通り、こそこそと裏から侵入などしない。
はじけた炎がフォートフルトファミリーの玄関を吹き飛ばした。
「っ!?何者だ!?」
「ボンゴレ十代目、沢田綱吉だ。抵抗すれば容赦はしない」
「ボンゴレだと?嘘をつくな!十代目は行方不明だということくらい周知の事実。
嘘をつくならもう少しまともな嘘をつくんだったな」
どうやら俺の姿を見たこともない下っ端のようだ。
命知らずにも自動小銃を構えてきた。
「命が惜しければ降伏しろ」
「っなっ!?」
引き金を引くよりも早く。
高密度の炎で覆われた手が銃を捉える。
炎に触れた銃は、あたかもチョコレートが溶けるかのようにぐにゃりと変形した。
「っな!?」
「言った筈だ。命が惜しければ降伏しろ、と」
命を取るつもりなど毛頭ないがこれくらいの脅しは有効だ。
まともに言葉も発せずに尻餅をつく見張りからボスの居場所を吐かせることは無理のようだ。
二人に視線を送ると同様の判断を下したのか一つ小さく頷く。
それをきっかけに獄寺君のダイナマイトが火を噴いた。
爆発音は派手だが殺傷能力はほとんどない誘導用のダイナマイトだ。
爆炎に反応し、けたたましい警報音が辺り一帯に響く。
それに誘う出されるようにわらわらと警備班が現われる。
すると機を逃さず山本の時雨金時がカチリと小さな鍔鳴りを立ててその刀身をあらわにする。
一足飛びに間合いを詰めると、切っ先を先頭の者の顎先にあてがった。
「動くなよ。動けばその首がどうなるか、わかってるな?」
「てめーばっかり目立とうとするんじゃねーぞ」
次に着火されたのはノーマルサイズのダイナマイト。
可変式のロケットボムで巧みに直撃を避けて爆破させる。
「うぁあっっ!!」
「大丈夫か!?負傷者は直ちに後方に退避しろっ!」
「おいおい。いくらなんでもやりすぎじゃねーのか?」
「怪我なんてさせてねー。俺のテクニックを甘く見んな」
「?そうなのか?・・・んじゃ、俺もちょっと本気ださせてもらうとするか」
「てめーこそドジ踏むんじゃねーぞ!!」
あてがっていた刀を一挙動で音もなく納刀すると身を低くかがめ抜刀の体勢に入る。
ピリピリとした肌を震わす緊張感を一瞬にして吐き出した。
『時雨蒼燕流 攻式八の型 篠突く雨』
器用にも刃を返し、峰で一撃を振るう。
峰といえども十分な打撃能力を持ち合わせた斬撃にたまらずフォートフルトファミリーの何人かが
床に伏せった。うぅ・・・と低いうなり声が聞こえる。
しばらく戦闘には役立たないだろうが命に別状はないだろう。
「お前らボンゴレ上層部か・・・・。何でそんな奴らがここに・・・」
どうやらようやく俺らをわかる者が現われたようだ。
「おとなしくしていれば殺すつもりはありませんよ。お宅のボスのところに案内してもらいましょうか」
「断るといえば・・・・」
「不本意ですが力ずくで行かせてもらいます」
「・・・・・・・・わかった。案内しよう」
「ありがとう御座います」
「お前ら、命が惜しければこいつらに逆らうな。本気を出されれば抵抗する間もなくやられるぞ」
リーダー格のその男の声に、しぶしぶながらも各々構えていた銃を降ろし始める。
「御申告、重ねてありがとう御座います」
「こっちだ。ついてこい」
「二人とも、行こう」
幾度となく道を折れ、長い廊下を歩かされ、ようやく一枚の重厚な扉の前にたどり着いた。
コンコン
金属のノッカーが叩かれ、不釣合いな高い音を鳴らす。
「ボス。ボンゴレ十代目をお連れしました」
「通せ」
焦りの混じった、それでも威厳を含んだ声が中から答えた。
ギィっと少しの音を立ててドアが開かれる。
扉の向こうにいるのは見知った男。
「ご無沙汰しています。ガラントさん」
フォートフルトファミリーのボスにして造反の首謀者。
「しばらく見ない間にずいぶんとお変わりになられたようですね」
ゆっくりとガラントとの間を詰めていく。
「俺としては、まぁ仲良くとはいいませんけど、それなりに折り合いつけてやってこれた仲だと
思っていたんですけど・・・・・・貴方としてはそうではなかったようですね」
苦虫を噛み潰したような顔でこちらを睨む彼の目には反抗と共に恐怖の色が宿っている。
「俺が何故ここに来たか、その理由はもうお分かりですね?」
う・・・・ぐ・・・・
声にもならない小さなうめき声が漏れた。
「何もあなた方ファミリーを殺しに来たわけではないんですよ。
俺がもともと暴力は嫌いということは貴方もご存知でしょう?話し合いで済むならそれに越したことは
ないんですよね。でも、もし話し合いで片がつかないようなら武力行使は厭いません」
「・・・・わかっている・・・」
「交渉内容についてはこちらの書類にまとめてあります。
双方にとって不利な条件を提示しているつもりはありません。
今ここでお返事をいただけるとこちらとしてもありがたいのですが・・・」
「見させてもらおう・・・」
それは交渉のようであり、実際には譲歩の余地を挟ませない脅しでもある。
彼自身も気づいているだろう。
書類に目を通そうが通すまいが、自分は『yes』以外の言葉を発せないことを。
ただ、どこかに抜け道はないかと必至に思案しているだけなのだ。
残念ながらそんなミスはない。
たった一つの綻びすらない。
ガラントがしぶしぶながらも謝罪と承諾を口にするのにそう時間はかからなかった。
■■■■ ■■■■
ろくな休息も取らずに制圧作戦を次々に決行した成果は確かにあった。
既に暴動は沈静化の兆しを見せている。
ボンゴレ十代目の復帰を知るやいなや、無条件に降伏してくる者、無謀と知りつつ対抗してくる者。
態度は様々であったが、最終的にそれらは全て降伏させられた。
絶大的な力と。
絶対的な威厳。
それがボンゴレを継ぐ者。
統一者たるゆえん。
しかし。
そんな生活が1週間も続くと、知らずに身体が悲鳴を上げ始めた。
頭はズキズキと痛み視界ははっきりとしない。
食欲もないし眠れない夜が続いている。
理由は自分でもわかっていた。
こんな争いにまみれた生活に耐えられるわけがないと。
それでも立ち止まるわけにはいかない。
やっと見えてきた鎮静化の流れをここで立つわけにはいかない。
俺はまだ、拳を下ろすわけにはいかないんだ。
「・・・ぅ・・・・ぉぇ・・・・・」
・・・気持ち悪い・・・・・・。
気持ちは決まっているのに身体がついていかない。
吐き出すものなど当の昔に吐き切ってしまった。
嗚咽だけが繰り返され、吐き出されるべき内容物は何もない。
唯一の胃液が喉を焼く。
必至の思いで飲み下し、荒げた息を整える。
「・・・・っはぁ・・・はぁ・・・・」
人がいないのをいいことに屋上に寝そべり空を仰ぐ。
外気の冷たさが不快な吐き気を少しばかり抑えてくれる。
胸を上下させ、少しでも自分の中の淀んだ空気を吐き出そうとする。
頭上を見上げれば、流れていくのは今にも降り出しそうな黒く重い雲。
きっと俺に中にもあの雲と同じようなもやもやがあるに違いない。
このまま一緒に胸に渦巻くもやもやとした何かも吐き出せてしまえればいいのに・・・。
そんなことは無理だとわかっているけど・・・。
「ずいぶんな姿だな」
顔など見なくても相手はわかる。
リボーン
そう言った筈の喉は音を発するほどのものではなかった。
それに対して俺は別段気にしない。
俺もリボーンも、お互いにここには自分達しか居ない事を理解している。
投げかけた視線だけで返事には十分すぎた。
この屋上は俺の私室からしか繋がっていない。
なんの断りもなく俺の私室に入れる奴なんて九代目かリボーンだけだ。
体調を崩している九代目がここに現われるとは考えられない。
消去法で答えは導かれる。
「もうギブアップか?」
「・・・・・・まさか・・・・」
「強がりにしか聞こえねーけどな」
ならどうしろというのだ。
無理でも何でも、これはやり遂げなければならないことなのだ。
「何か言いたそうだな」
見下すように、いや、実際見下しているのかもしれない。
こちらの表情を読み取ったのか、頭のちょうど上から覗き込むようにしゃがんだ。
上下が逆さまになったリボーンの顔はにやりと口角を持ち上げ至極うれしそうに見えた。
「俺が代わってやろうか?」
「・・・・フォローはしないんじゃなかったのか」
「ま、それは条件次第ってやつだ」
「お前の要求か・・・・」
「予想以上に造反ファミリーの制圧が早く終わりそうだからな。特別にまけといてやるよ」
こいつのことだ。
どんなとんでもない要求を突きつけられるかわかったものじゃない。
こいつがこんな風に楽しそうに笑っている時なんてなおさらだ。
「どうする?」
一瞬。
正体の掴めない不安感に襲われる。
ここに居てはいけない気がする・・・。
理由もわからないが超直感がそう告げている。
「悪いけど、必要ない。これは俺の仕事だから」
こちらを覗きこむリボーンをさけて身体を起こす。
気持ち悪さはまだ抜けきらない。
それでも。
ここに居るよりはマシのはずだ。
気だるい身体に活を入れ無理やり立ち上がる。
と―――
「っぅあ!?」
立ち上がりかけたところを思いっきり後方に引かれた。
突然のことにバランスを取ることも出来ずその場に尻餅をついてしまう。
「・・・・っ・・・・てぇ・・・・。何すんだ・・・」
「言う事を聞け」
反論も言い切らぬ前に言葉をさえぎられた。
「・・・・・リボーン・・・?」
「そんな満身創痍で一体何が出来るっていうんだ。お前はもう引っ込んでろ」
「っいやだ!俺は1秒でも早くこんな騒ぎを鎮めて」
「あいつの所に帰るつもりか・・・?」
思わず声に詰まった。
帰りたい。
でも
帰る場所なんてない。
ただ
雲雀さんに逢って、話して、謝りたい。
何も言わずに出て行ってしまったこと。
約束を守れなかったこと。
いっぱいいっぱい聞いて欲しいことがある。
許してくれなくてもいい。
ただ
もう一度
雲雀さんに逢いたい。
「・・・逢いたいんだ・・・・雲雀さんに・・・」
ホロリ。
涙が頬を伝った。
今になってイーピンの問いに答えを見つけた気がする。
俺はただ、心のままに感情をさらけ出したかったんだ。
子供みたいに泣き喚いて。
我侭言って。
ありのままの感情をありったけぶつけて。
ただただ、雲雀さんが好きだと言いたかった。
一時だって離れたくない。
貴方といるためならこの手が汚れることも厭わない。
たったそれだけの代償で貴方といられるなら、血にまみれても構わない。
それだけの覚悟があるはずなのに
あの時貴方を一人で行かせてしまった。
その自分の不甲斐無さに。
俺は泣きたかったんだ。
愛しい人と共に居たいだけなのに、どうしてそんな単純なことがこんなにも難しいのだろう。
本当はそんな体裁なんかいらなかった。
ただ心が叫ぶままに声にしたら良かったんだ。
逢いたい、と。
寂しい、と。
好き、と。
押し込めた感情が積もり積もって、あの時吐き出されようとしていたんだ。
あの時言えなかった言葉が次々とあふれ出す。
「・・・・雲雀さん・・・・逢いたい・・・雲雀さん・・・」
後から後からあふれ出す涙の数だけ、雲雀さんへの想いが募る。
こんなにも沢山の想いがあったのかと、自分でも驚くくらいに。
「雲雀さんと居たいんだ・・・・」
心のままに。
想いが言葉となって世界に放たれる。
次の言葉を口にしようとしたその時。
不意に
強い力で抱きとめられた。
いつか、そう俺が雲雀さんの所へ行った日と同じように。
後ろから、きつく。
きつく抱きしめられる。
「・・・・・俺が居るだろ・・・・」
ポツリ
ポツリ
重苦しい色をした厚い雲がとうとう堪えきれずに雨粒を零し始める。
「あいつのことなんか忘れろ」
それはまるで泣いているようで。
あの日の壊れそうな姿が脳裏をよぎる。
「俺がそばに居てやる」
ダメだ
続きを言わせてはいけない。
踏み込んではいけない。
俺たちの関係が、崩れてしまう。
「っリボーン!!それ以上言うな!!これは命令だっ!」
「俺はお前だけを見てきた」
必至で腕を振り解こうともがくがびくともしない。
抱きしめる手に更に力がこもる。
もがけばもがくほど、その手は離すまいと力が込められる。
雨粒も次第に粒の大きさを増し、身体を打つ。
「聞こえないのか!やめろっっ!!」
「お前も、俺だけを見ていればいい」
聞きたくない。
それ以上の言葉も
それ以上の感情も
何も聞きたくない。
「頼む・・・・・言わないでくれ・・・・」
懇願の声すら届かない。
生徒と家庭教師。
それで俺たちの関係は良かったはずだろ。
嫌だ。
気づきたくない。
知りたくない。
「・・・・頼む・・・・」
お前の言葉は俺たちの関係を破綻させてしまう。
絶妙のバランスで成り立っていた関係。
二人で必死に作り上げたこの関係。
望んだのはリボーン、お前じゃないか。
あの日二人で感情に蓋をした。
お互いの気持ちを二人で捨てた。
『今後俺への恋愛感情は全て捨てろ』
『っな・・・・!?何突然言うんだよ!』
『お前はこれから十代目になるんだ。ファミリー内での恋愛なんて必ずお前の負担になる』
『・・・そんなことないよ・・・』
『もし俺に何かあったら、お前はきっとボスとしての判断を鈍らせる』
『・・・・・・・・・そんなこと・・・・・・・・・・』
『俺は、お前に何かあったら何を置いてもお前に駆け寄っちまう。まず間違いなくな。
俺たちがただの恋人ならそれでもいいんだろうが・・・・。そんなわけにもいかねーだろ?』
『・・・それは・・・』
『私情でファミリーを危険に晒すなんて言語道断だ』
『・・・・・・・・』
『俺たちの関係はここまでだ。生徒と家庭教師、その関係に戻るべきなんだ』
『・・・・・・お前はそれでいいのかよ!』
『良いも悪いもねぇ。そうしなくちゃならないんだ。納得しろ』
『・・・・わかんないよ。好きなのにどうして一緒に居られないんだよ・・・?』
『グダグダ言うな』
『だって・・・・』
『ともかく、俺たちはもう終わりだ。いいな?』
『リボーンがどんなに泣いてすがったって絶対許してやらないからな!』
『それでいい。明日からは・・・・・』
「生徒と家庭教師に戻ったじゃないかっ!!」
それを何で今更
今、頬を伝ったのは雨だろうか。
それとも、涙だったのだろうか。
わからない。
わからない。
雨よ、どうか流し去ってくれ。
今日のこの日の出来事を。
ぶり返してしまったこの感情を。
「ツナ・・・・好きだ」
今更なんだよ
「ずっと、俺の気持ちはあの時から変わらないままだ」
そんなこと言うな・・・・
やっとの思いで塞いだのに
お前が望んだのに
なぜお前が壊すんだ。
お前が言葉にしてしまったら、俺の中で消しきれない想いがあることに気づいてしまう。
見ぬ振りをしてきた感情を無視できなくなる。
「好きだ・・・・ツナ・・・。俺の所に帰って来い」
「・・・・リボーン・・・・」
今更過ぎる。
俺はもう見つけたんだ。
別の人を。
お前を忘れることが出来るくらいの人を。
雲雀さんを。
なんで今になってそんなこと言うんだよ。
「あいつのことなんか考えられないようにしてやる」
「やっ!?ヤダ!!やめ・・・・・んっ・・・っはぁ・・・」
「・・・俺だけを感じろ・・・・」
噛み付くように唇が合わせられる。
口唇を割り入って侵入するリボーン。
がっちり抱き止められた腕から逃げることも出来ない。
くちゅ、と艶かしい音を立てて舌が絡み合う。
次第に動きは激しさを増して歯列をネットリと舐めあげる。
呼吸もままならない口付けに
久しく感じなかったリボーンの熱に
頭の芯がジンと鈍く痺れていくのを感じた。
唇を合わせたままリボーンの手が体中を愛撫し始めた。
激しさを増した雨によってシャツは身体に張り付き、身体のラインをあらわにする。
「ココ、いじられるのが好きだったよな」
「バカ!やめろ・・んぐっ・・・」
ままならない反論をキスでふさがれ、シャツの上から胸の突起を弄られる。
濡れたシャツの摩擦がより刺激を強くさせる。
「んぁっ・・・・っ・・・・はぁん・・・・」
「身体はまだ俺を覚えているみたいだな」
「ちが・・・ぁぁ・・・・・ん・・・・」
「何が違うんだ。こんなにして」
直接肌に手を這わせようとするが濡れたシャツのボタンは思うように外れず
もどかしくなったのか力任せにシャツを左右に開かせる。
いくつかのボタンがはじけた。
続いてカチャカチャと音を立ててベルトを外しにかかる。
「・・・な・・・何を・・・・」
「お前を抱く」
「何考えてんだっ!!ふざけるのも大概にしろよ!!・・・・っ!?」
「ふざけているように、見えるか・・・・?」
手がするりと下着の中に侵入した。
逃れる間もなく俺自身を握りこまれる。
「っ!?」
「俺しか見えなくなるまで、俺の下で啼け・・・」
それから
性急に身体を求められ雨に打たれることにも構わず
俺は抱かれた。
引きちぎられたシャツのボタンが無残にも辺りに転がっている。
かろうじて腕に引っかかったままのシャツがあるものの、濡れたそれは身体の動きを制限する
ただの枷でしかなかった。
力で組み敷かれ、ろくな抵抗も出来ずに俺はなすがまま。
あられもない俺の嬌声は全て雨風が攫っていく。
「・・・・っん・・・ツナ・・・・」
「あっ・・・・ぁあっっ!!ヤ・・・・ダ・・・・っぁあっ!」
「・・・好きだ・・・・ぅ・・・・あぁっ!」
もう何度求められたのかすらわからない。
雨に濡れ
精に塗れ
色に溺れる
抵抗の声すらリボーンを煽らせるだけ。
思考が追いつかない。
痺れた理性を快感が侵食していく。
何も考えられない。
このまま、本当に溺れてしまおうか・・・・
そうすればこんなに辛い思いをしないで済むんじゃないか?
そうだ・・・
何もかも、手放して快感だけに身を委ねれば・・・・・
(・・・・!)
快楽に流されそうになった脳裏に一つの顔がよぎった。
雲雀さん・・・・
「・・い・・・やだ・・・・助・・・け・・・・」
俺は既に雲雀さんを裏切っているけれど
心まで裏切ることなんて出来ない。
身体を犯されたって、この気持ちまで侵されるわけにはいかないんだ。
雲雀さん
雲雀さん
助けて・・・・
「助け・・・て・・・ひ・・・ばりさ・・・ん・・・」
「っ!!」
急にリボーンの手が止まった。
「・・・・リ・・・・ボーン・・・・?」
「・・・すまない・・・」
先ほどまでの荒々しさが嘘のように、優しく口付けを落とす。
慌ててジャケットを脱ぐとそれを俺の頭からかぶせた。
「約束通り、後の始末は俺がしてやる。その代わり、お前はあいつにもう逢うな。いいな?」
「・・・・・・・」
反論するだけの気力も俺には残っていなかった。
精神も体力も極限にまですり減らされている。
ただ、その言葉を受け入れることしか出来ない。
それなのに漠然とした悲しみがこみ上げてきた。
二度と逢えないのか
あの人に・・・
もう何を伝えることも出来ない
謝る事も、弁明することも、何も出来ない・・・・
絶望に似た何かが俺の心を浸食する。
蒼白になった俺の顔に気づいたのか、しばらくの沈黙の後リボーンは小さく悪態をついて
苦々しく言葉を続ける。
「・・・・一生とは言わねぇ。そうだな、年に一度。それが最大の譲歩だ」
そうか・・・
年に一度
それでも雲雀さんに逢えるんだ。
逢ってくれるかなんてわからないけど・・・・・
まだ、逢える可能性があるんだ・・・
その言葉に張り詰めていた緊張の糸が途切れた。
気を抜いた瞬間、俺は意識を手放した。
■■■■ ■■■■
次に目を覚ました時は私室のベットの中だった。
綺麗に見繕いされており、寝巻きまで着せられていた。
自分がいつベットに入ったのかわからず頭をひねらせていると、静かに扉が開いた。
「目ぇ覚めたか」
「リボー・・・っ!!」
途端に昨日の出来事がフラッシュバックする。
肌のぬくもりや舌の感触、内部に侵入する異物感。
何もかもが鮮明に頭を駆け巡る。
「その様子なら、昨日のことは覚えてるみてーだな」
満足そうに一つ笑みを零すとベットに歩み寄る。
何の断りもなく端に腰を下ろし、そっと俺の前髪をかき上げた。
リボーンの指が肌に触れ、思わずびくりと身体を震わせる。
たったそれだけの触れ合いで顔が赤くなる。
「昨日俺が言ったことを覚えているな?」
「・・・・あぁ・・・・・」
「約束も、覚えているな?」
「・・・わかってる・・・」
雲雀さんに逢えるのは年一回だけ。
たった一回。
俺がその条件を飲めたのは、それでいいと思えたからなのかもしれない。
ずっと一緒にいればまた均衡は崩れてしまう。
そうなるくらいなら。
これくらいがちょうど良いのかもしれない。
「なら今日は寝てろ。お前こっちに戻ってきてからろくに寝てねーだろ」
「ばれてた・・・?」
「当たり前だ。俺はお前の家庭教師だぞ。生徒のことくらい把握できないでどうする」
「・・・・・・・なぁ・・・・」
「あ?」
「なんで俺を抱いたんだ・・・?」
終わったはずの関係を今更持ち出して。
ポーカーフェイスのお前が感情むき出しになって。
「・・・ただの・・・・気まぐれだ・・・・」
「本当に?」
「当たり前だ」
安心しろ。
もうあんなことはしない。
俺とお前は家庭教師と生徒、それだけの関係に戻ったんだ。
「わかったらとっとと寝ろ。後のお前の仕事は片付けといてやる」
問い詰めて聞いてやりたかったが睡魔が襲い掛かる。
疲労と倦怠感が抜けない身体では抗うことも出来ず、再び俺はベットに身を沈めた。
小さな寝息を確認してリボーンは部屋を後にする。
扉をくぐってその場にへたり込んだ。
「俺もまだまだガキだな」
あいつの一番が俺じゃなくなっただけでこんなにも余裕がなくなるなんて・・・
何で抱いたかだって?
そんなもの俺が聞きたいさ。
「・・・嫉妬だなんて、あいつにゃ死んでもいえねぇよ・・・・」
さて。このままだと採算があわねぇ。まるで悪徳商法だ。
しかたねぇ。
癪だが、おまけでもしといてやるか。
■■■■ ■■■■
山間にたたずむ小さな一軒家。
窓からかすかに漏れる明かりが人の存在を示している。
来訪には憚られる深夜遅い時間にも関わらず、何者かがノックもせずに不躾にドアを開けた。
「お前が雲雀か?」
「・・・・君、誰?悪いけど今機嫌が悪いんだ。近づいたらかみ殺すよ」
「面白いことを教えに来てやったんだ。感謝こそされ、殺される筋合いはねーな」
謎の侵入者に、心穏やかでなかった雲雀の感情を逆なでする。
「勝手に入ってこないでくれ・・・」
ココは綱吉が帰ってくる場所なんだ、そう続けようとした時。
「ツナはここには帰ってこねぇ。まぁ年に1回くらいなら考えてやらないこともないけどな」
思いもよらぬ名前が飛び出した。
「・・・君、綱吉の知り合いかい?」
「質問に答える気は無いね。はじめに言った通り、俺は一方的に『教え』に来ただけでお前と
会話しに来たわけじゃねーんだ」
「綱吉はどこにいる」
「答える義理はねぇな」
「どこに居るか、知ってるなら力づくでも吐いてもらう」
「おっと。これでも俺はいそがしーんでね。お前と遊んでる暇なんかねーんだ」
にやり。
俺は全てを知っていると言わんばかりの笑い。
人を小ばかにした笑いが雲雀の逆鱗に触れる。
袖に隠した仕込みトンファーに手を伸ばす。
「動くな」
「!?」
モーションを掛け始めてすぐの静止。
それだけでかなり腕が立つことが見て取れる。
「お前が撃ち込むより、俺がトリガーを引くほうがはえーぞ」
「・・・・・」
ただの自尊ではないようだ。
それを示すかのごとく、既にトリガーに指が掛けられている。
言葉通り、彼が引き金を引くほうがわずかに早いことを悟った。
こちらが反撃しないとわかるとトリガーから指を外して続けた。
「あいつにはあいつの生きる世界がある。そこでやらなくちゃいけない事もな。
そのためにツナは自分がいるべき世界に帰ったんだ。お前の出る幕じゃねぇ」
「何それ」
「お前には関係のない話だ。邪魔したな」
嵐が去った。
前ぶれもなく突如として現われ、そして消えていった。
彼が残した言葉。
(ツナは自分がいるべき世界に帰ったんだ)
「綱吉・・・」
今どこにいるんだい。
お・・・・終わった・・・・
長い・・・長いよ・・・・
分割したのにこの長さって一体どういうことよ?
無駄に情事とか書いてみたけどこれ恥ずかしすぎる!!
羞恥プレイだ!
臨場感なくてすみませ・・・・orz
さて、タイトルの催涙雨ですが。
こいつも七夕用語でして。
七夕の日に降る雨のことで、逢うことの出来ない彦星と織姫が流す涙なんだそうです。
心が出会えない二人にぴったりなんじゃないかと思ってつけて見ました。
さぁ次はいよいよラストです!
一体どうなってしまうのか!?さかき自身わかっていないってゆー。
2008/10/09
※こちらの背景は
NEO-HIMEISM/雪姫 様
よりお借りしています。