ここから先は『織姫牽牛伝説』を軸にしたパロディになります。
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催涙雨〜前編〜
リボーンと共に戻った天上のアジトで二人の部下が俺を迎える。
古くからの俺の友人でもある獄寺君と山本だ。
二人の姿を目視した時、少なからず俺の胸は痛んだ。
幾度と無く俺のために身体を張って動いてくれた二人を裏切るようなことをしたのだ。
己の罪を否が応でも意識させられる。
彼らを前にしてなんと声を掛けたらいいのかわからず、ただただうつむくことしか出来ない。
絞り出すように紡いだ言葉は空気を振動させるほどの響きを持っていなかった。
声がかすれて上手く出ない。
手足が震えている。
それでも
心だけははっきりと答えを出していた。
どんな非難も、俺は甘んじて受ける覚悟を決めていた。
それだけのことをしたと自覚している。
どんなに蔑まれようとも
どんなに罵声を浴びせられようとも
今更引き返すことなど出来ない。
後戻りをしている時間など無い。
きっ、と歯を食いしばり二人の前に立つ。
にらみ合うような、静寂。
彼らは俺の顔をまじまじと覗き込み、そしてどちらからとも無く口を開く。
「十代目!お待ちしておりました!!」
「おせーぞ、ツナ。待たせすぎ」
・・・・え?
俺は思わず目を見開いた。
罵声を浴びせられると覚悟していた彼らの口から予想外の言葉が飛び出した。
社交辞令的なものでない、本心からの歓迎の言葉。
俺の帰りを彼らは迷いも無く信じていてくれたというのか。
雲雀さんといる間、天上のことを思い起こすことすらしなかったこの俺を・・・。
「・・・獄寺君・・・山本・・・・・・俺・・・」
さえぎるように二人が頭を下げる。
「すまないな。お前の留守を守れなくて」
「自分が不甲斐無いです。こんなことで十代目のお手を煩わせることになるなんて・・・・・
俺は十代目の右腕失格です・・・」
何故
何故彼等が謝る。
悪いのはこの俺だ。
俺が自分の立場も省みずにいたから
俺が自分のことしか考えていなかったから
俺が身勝手なことさえしなければこんなことは起こらなかった。
なのに何故、彼等が謝るのだ。
「やめてよ、二人とも・・・・謝るのは俺の方だ・・・」
俺の罪を許さないで。
「・・・俺が・・・・・」
優しくしないで。
「・・・・・下界なんかに行かなければ・・・」
甘えてしまうから。
「こんなことにはならなかったはずなんだ」
俺の我侭は秩序を壊す。
天上も
地上も
俺のせいで
均衡を崩してしまった。
ならば俺は己を律する。
我を捨てて
統一者としてこの身を捧げるべきなのだ。
それで全てが上手くいくなら
そんな人生も悪くは無い。
愛しいあの人に平穏が訪れるのなら
きっと俺は耐え抜くことが出来る。
だから俺は戻ってきた。
雲雀さんを捨ててまで
俺はここに帰る決心を固めることが出来たのだ。
全ての罪はこの俺に着せればいい。
全ての罰をこの俺に預ければいい。
誰もが俺を責めてくれた方がましだ。
憎んでくれればいいのに。
恨んでくれればいいのに。
どうして・・・・
どうしてそんなにも優しいんだ。
「ごめん・・・・ごめん・・・・ごめん・・・・」
何度も何度も
俺は繰り返しつぶやいた。
彼らにだけではなく
このアジトの全ての者に
天上界の全ての人に
雲雀さんに
俺は謝罪を繰り返す。
一体どれだけの間そうしていただろうか。
執拗に繰り返された謝罪の言葉を止めたのは後頭部の痛みだった。
べし
手加減無しに叩き込まれたチョップが見事に後頭部に決まる。
「っ!?」
勢いよく振り返った先にいたのは痺れを切らしたリボーン。
「いつまでこんなところで油売ってる気だ」
「・・・・・リボーン・・・」
「さっさと仕事しろ。やることは五万とあるんだ」
「・・・わかってる・・・でも・・・」
「悪いと思ってる気持ちがあるなら謝罪は結果で示せ」
「結果・・・」
つまり、この暴動の終焉。
十代目としての仕事を全うすることが何よりの謝罪だ、リボーンはそう言っているのだ。
「責められることで許されようだなんて思うんじゃねーぞ。
そんな生ぬるい方法で俺が許すと思うか?」
「・・・いや・・・」
「なら、お前がすべきことはわかっているんだろうな?」
「あぁ」
俺がすべきこと。
俺がしなければならないこと。
「これからボンゴレ緊急会議を執り行う。
本部にいる人間を全員中央の間に集めてくれ」
「はい!十代目のご命令とあれば15・・・いえ、10分で集合させます!!」
勢いよく返事をして獄寺君は一目散に走り出した。
続けて俺は山本に向き直る。
「山本は離反ファミリーのリストアップを。ファミリーの大小を問わず全てあげてくれ」
「おーけい」
「頼んだよ」
山本も踵を返して本部内へと姿を消した。
後姿が完全に見えなくなったところでリボーンが口を開いた。
ニヤニヤと笑いながら。
「なにやらかすつもりだ?あ?」
わかってるくせに。
見透かしていながらわからないフリをする。
「俺は俺のやり方でやらせてもらう」
「勝手にしろ。なんかあっても俺はフォローしてやらないからな」
「そんなつもり、元からないさ」
フォローなんていらない。
もともとする気も無いくせに。
俺一人で立ち回って見せる。
この暴動を治めて見せる。
「ならさっさと中いくぞ」
「あぁ」
■■■■ ■■■■
「十代目。本部に残っている者は見張りの数名を除いて全員そろっています」
「ありがと」
コツコツコツ
百人以上が居るというのにこの静けさはなんとも異常だ。
静まり返った広間に俺の足音だけが響く。
中央まで歩みを進めたところでくるり皆の方に向き直る。
俺の一挙一動を皆が固唾を呑む。
握りこぶしに力を込めてスッと小さく息を吸った。
「皆。まず、ごめん」
高いとも、低いともいえない不思議な響きを持った声が発せられた。
独特のやわらかさを持ったそれは言葉を続ける。
「俺の身勝手な行動で九代目を初め、皆を危険に晒すことになってごめん。
今回の不祥事は全面的に俺の責任だ。本当にごめん」
深々と。
誠心誠意を込めて。
頭を下げる。
今の俺に出来ることはこれしかないのだから。
優に1分以上経過してから、ゆっくりと頭を上げた。
「更に俺の我侭になるんだが、自分の不始末を片付けるためにここから先、
俺に指揮を執らせてもらえるだろうか」
一瞬の静寂の後。
「貴方以外の指揮など考えられません!どうぞご命令を!!」
誰からとも無く、高らかに声が上がった。
その声を皮切りにそこかしこで歓声にも似た声が上がる。
『どうぞご命令を!!』
『どうか十代目の御意思のままに!!』
強固な意志のこもった言の葉が。
全幅の信頼が俺に寄せられる。
「ありがとう。こんな俺を信じてくれて。
では、これより先の指揮は俺が執らせてもらう。
まずは状況を正確に把握したい。山本、頼む」
「OK。現在確認されている離反ファミリーはフォートフルトファミリーを筆頭に11。
その中でもイェップリングファミリーとハイデビーファミリーは以前からうちと反発するところが大きかったせいかかなり好戦的になっている。十分に注意してくれ。
続いてミーサロンファミリーだが、ここはファミリーの規模は大きいもののフォートフォルトファミリーに圧力をかけられての離反なので今のところ武力抗争にはなっていない。しかし規模が規模だけに今後外交での支障が危惧される。
それから最近離反が確認されたスヴァルカファミリーだが、奴らは・・・・・・」
しばらくの間、山本の現状報告が続いた。
状況は俺が思っていたよりも拡大しているようだった。
何よりも双方にかなりの数の死傷者が出ていることに心を痛めた。
「俺からはざっとこんなところだ」
「ありがと」
「どのようになさるおつもりですか?」
隣で待機していた獄寺君が問いかける。
自分の中でどのような状況だろうと取るべき行動パターンは決まっていた。
多分、これ以上の効率の良い方法もないと思う。
きっと皆には反対されるだろうけど。
「では迎撃第一陣の対象をフォートフルトファミリーと定める。
戦況は著しく悪い。時間が空けばそれだけ事態を悪化させることになる。
急ではあるが、明日夜明けともに迎撃を決行する。異論があるものがいたら発言を」
「十代目。お言葉ですが明日の夜明けでは突入準備が間に合わないかと・・・」
「準備の必要はない。明日行くのは俺一人だ」
『なっ!?』
予想どうりの動揺が部下の間を駆け巡った。
混乱が起きる前に俺は言葉を続ける。
「今回の一件については全て俺が前線に立つ。
俺がここを離れている間の指揮はリボーンに任せる」
「オーケイ、ボス」
壁に背中をつけたまま、クイッと帽子を少しだけ持ち上げて答える。
にやりと唇の端を上げたのが見えた。
やはりリボーンには俺の行動パターンなどお見通しだということか。
「ちょっと待ってください!十代目!!」
部下全員の異論を代表するかのように獄寺君が口をはさんだ。
「前線だなんて危険すぎます。そんなのは俺たちの役目のはずです。
明日の昼過ぎには準備が整います。
それを待ってから十代目は本部に残り全体の指揮を執れば十分ではありませんか?」
「それじゃダメなんだよ」
「なぜですか!?」
「頭を使え、獄寺。頭脳班のお前が感情的になって判断を誤るな」
冷静さを失った獄寺君をリボーンが嗜める。
頭のいい獄寺君の事だ。俺がこんなことを言う真意はわかっているはずなのだ。
「ですが・・・・」
「どういうことだ?小僧?」
状況が理解できない山本はリボーンに尋ねる。
「いいか。そもそも今回の一件が生じた原因を考えてみろ」
「九代目が倒れたからだろ?」
「確かにそうだ。では何故九代目が倒れた?」
「それはオーバーワークがたたって・・・・」
「既に引退の身でありながら限界の身体を押したのは何故か」
「・・・・・・!!」
ここにきて山本も事態を理解したようだ。
気づいた事実を口にして良いものか考えあぐねて言葉に詰まっている。
仕方無しに俺自身が代わりに答える。
「俺が不在だから、だろ?」
リボーンが静かに一度頷く。
「奴らにとって一番の強みは九代目が倒れ、十代目が不在の現状。
つまり今まで自分たちを縛っていた統一者がいないことだ」
「だからこそ俺が戻ってきたことをアピールすることで奴らの行動を抑制できるはずなんだ」
「ツナが前線に立てば否が応でも十代目復帰の噂が広まる。
まぁ、しばらくは眉唾と思われるだろうが回数を重ねれば真実味が増すだろうな」
「しかし・・・」
「危険なのは十分わかっている。でもリスク以上の効果があるなら俺は行くよ。
今まで皆を危険な目に合わせておいて自分だけのほほんと
安全なところから指揮を執るなんて、俺にはできないよ」
俺の意思が通じたのか、ざわついていた広間に再び静寂が訪れる。
「なら、俺もついていくぜ」
静寂を打ち破る声を発せられた。
ついで二人目の声もそれに続く。
「俺もお供させてください」
「・・・山本・・・獄寺君・・・」
「大将一人で敵陣に乗り込みなんてそれこそうそ臭いだろ?」
「十代目の意志の硬さは十分存じています。
それでも貴方一人を敵地に送ることなんて出来ません」
断られるなどとは微塵も思っていない顔だ。
既に彼らの顔は戦闘モードに入っている。
不謹慎にも俺は笑いがこみ上げてきた。
自分も大概に頑固者だと思うがこの二人も筋金入りだ。
着いてくるといったらどんな手を使ってでも着いてくるだろう。
こんなところばかり自分に似てしまった部下を喜ぶべきなのかしかるべきなのか俺には解らない。
ただ
「作戦決行は明朝。突入部隊は俺、獄寺、山本の3名で行う」
何よりも心強くはある。
本当ならこんな戦いに彼等を巻き込みたくは無かったが彼らのサポートがあってこそ俺はここまでやってこれたのだ。彼らの意思を無下にすることなど出来ない。
「その他の戦闘部隊はローテーションで九代目の警護と本部の警備に当たってくれ。
俺たちの目的は敵の殲滅ではない。出来うる限り相手を傷つけないで欲しい。
もちろんお前たちも傷つかないでくれ。
健闘を祈る。以上だ。
皆、俺の我侭に付き合ってくれてありがとう」
俺はもう一度、深々と頭を下げた。
予定よりかなり長くなったしまったのでここでひとまず。
タイトルの催涙雨は後編にて説明いたします。
この後に催涙雨にかかるシーンがあったのですが
本人もびっくりのところで分割してしまったので
今回タイトルと全く関係のない内容になってしまいました。
そうそう。
ごそっと出てきたファミリー名ですが、IKEAのカタログから引っ張ってきた家具ブランド名です。
何も深いいわれとか、伏線とかありません。
あしからず。
2008/10/06
※こちらの背景は
NEO-HIMEISM/雪姫 様
よりお借りしています。