「このまま君を何処かに閉じ込めてしまいたいよ」

ふいに、貴方はそう言った。

「・・・・どうしたんですか?突然」
「別に。ただ思っただけ」

そういって貴方は私の右手を絡めとり、優しく、けれども確実にベッドに縫い付ける。

「誰の目にも触れないように、閉じこめてしまえれば君を独り占めできる」

肩口にキスが一つ。

「僕と君だけで完結する世界だったらいいのに」

ちゅ、とキツク吸われる感覚の後、首元に貴方の頭が埋まる。

「・・・・・・・・君だけいてくれればそれでいいのに・・・・・・」

何かに耐えるかのように、首筋に歯を立てようとして。
貴方はソレを躊躇する。

「・・・・・・・ヒバリさん・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・ヒバリさん・・・・・・」
「・・・・・・なに・・・・・?」
「もし仮に、ヒバリさんが私を閉じ込めたとしてソレで得られるものはなんでしょう?」

開いている左の手を虚空にかざす。
そこに意味はない。
意味のない話をしているのだから、行動が意味を伴う必然性はない。
そう。
これは全くもって意味を成さない戯言。
例えるなら、間休止。
無くても構わない、切り取ってしまえるそんな間幕。




右肩に檻






「初めこそ独り占めという優越感を得ることが出来るかもしれません」

「でもすぐに貴方は言い知れぬ不安感に襲われる」

「『私がソコから抜け出さないか』
 『誰かに連れ出されていないか』
 常にそんな不安を共にすることになる」

「本当の意味で誰かを何処かに閉じ込めるなんてこと、出来ないんです」

「どれだけ世界から隔離しようと、どれだけ拘束しようとも」

「誰にだってそんなことは出来ない」

「肉体と精神が分離しているこの世界において、不可能なんです」

「例えばこうしている今だって、私の心はどこにあるかヒバリさんには知る由もない」

「誰か別の人を想いながらこうしているかもしれない」

「それでもヒバリさんは私を閉じ込めようとしますか?」

伸ばしたままの左手を、貴方の右手が捕らえる。



「しないよ」



「そんなことしない。虚しいだけだって知ってるから」

「僕にとっても、君にとっても、ね」

「ソレによって得られるものにもっと有用性があるなら違ったのかもしれないけれど」

「世界はそこまで単純じゃない」

「少なくとも僕は、そう思ってる」

「束縛なんて、自分を一時安心させるだけの行為でしかない。そんなことに意味は無い」

埋めていたままの頭を少しだけもたげ、歯を立てる代わりに優しく唇を落とす。
首筋で揺れる髪の毛のくすぐったさに耐えてると貴方の頭はまた肩口に移動した。
先ほどつけた痕に舌を這わせながら貴方は言う。

「意味なんか無いんだ。
どれだけ君の身体に僕の痕跡を残そうとしてもいつかは消えてしまう儚いだけのもの」

何度刻んだところで、ただの自己満足にしかならない。
そんな行為に意味なんか無い。
意味など無いと分かっている。
それでも。
それでもやめられないのは、人間と言う浅ましさのためか。

「初めに言ったじゃない。ただ思っただけだよ・・・・・」

自らを嘲る様に、崩壊しそうな脆さを有して貴方は言う。

「どんなに無意味だろうと、思うことくらいは許されるべきだと思わない?」

求められたのは同意なのか。
それとも否定だったのか。

私にはわからない。

「そうですね・・・・・・・」

答えたのは同意だったのか。
それとも、別の何かだったのか。

私にはわからない。

ただ、私にわかっているのは

「無意味ということが、無価値だとは思いません」

たった一つの核心めいた何かだけ。


こんなちっぽけな傷跡が不確かさを僅かでも取り払うモノとなりうるなら、いくらでもつければいい。
消えてしまうなら、つけ続ければいい。

「ヒバリさん・・・・・・」
「なに」
「・・・・・・・・いえ。なんでもないです・・・・・」
「そう・・・・・」

この、貴方と言う名の檻を抜け出すつもりがない私
ならばそれは囚われているのと同義ではないか。

そう問おうとして、止めた。
不確かさを具現できるほどの何かを私は持ち合わせていないから。
問う代わりに、私は貴方の胸に一つの傷跡を刻んだ。
無意味な傷跡を互いに刻みあった。









ヒバピンリハビリ。

なんだろう?何を書きたかったんだろう?

なんかふと監禁の精神不安定さとかを考えてみた結果こうなった。

考えすぎた結果、よく分からなくなった。

二人は自分達の恋愛すらも他感出来るくらいに出来たカポーだと思ってます。

2009/11/22





※こちらの背景は ミントblue/あおい 様 よりお借りしています。




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