すがるような気持ちで、私はヒバリさんの部屋に飛び込んだ。
何事かと振り返ったヒバリさんは私の顔を見て少し息を呑む。
「・・・・どうしたの?」
「・・・な・・・んでもな・・・いです・・・・」
「なんでもないならその顔は何なの?」
「・・・・・なんでも・・ない・・・んですってば・・・・・」
自分で言っておいてなんだが、なんでもないはずがなかった。
目元を赤く腫らして、息を切らせて人の部屋に走りこんでおいて、理由がないはずがない。
しかし私はどうしてもヒバリさんに言いたくなかった。
こんなことを言って幻滅させるのが嫌だった。
それなのにヒバリさんに救いを求める自分はなんて傲慢なのだろう。
自分の不甲斐無さに、また目頭がジワリと熱くなるのを感じる。
頑なに理由を言おうとしない私に呆れたのか、諦めたのか、それ以上ヒバリさんは追及しようとしなかった。
部屋のドアを開けたときと同じように、こちらに背を向けてその場に座した。
「言いたくないならいいよ」
冷たく放たれる一言。
それはこれ以上ない拒絶。
でもそれは仕方がないことだと思う。
私にはヒバリさんの行動を非難するだけの正当性を持ち合わせていなかった。
ただただその場に立ち尽くし、声もなく雫を落とす事しかできない。
「そんなところで何してるの」
お願い。
優しい言葉なんて要らない。
だから今だけ、ここにいさせてください。
せめて貴方のそばで泣かせて下さい。
声なき訴えが相手に届くことなんてなく。
ヒバリさんの肩越しの声は続く。
「君はココに泣きに来たんだろう?背中貸してあげるから好きにしなよ」
「・・・・・っっ!!!ヒ・・・・バリ・・・さんっ!!」
視界は滲み、よく見えない。
それでも
飛びつくようにしがみついた貴方の背中が温かかったことだけは覚えてる。
背中をさすることも、頭を撫でてあやすこともしないけれど、ただ黙って私が泣き止むのを待ってくれた。
不器用な貴方の優しさを、私は覚えています。
「・・・・・・ピン・・・・・、一つだけ約束して」
「泣き終わったら、ちゃんと笑うんだよ?」
肩越しに差し出された小指。
私は静かに指を絡めた。
約束に理由は要らない
雰囲気の何か。
突然泣き出したピンを不器用に見守る雲雀が書きたかっただけ。
この不器用さが好きだ!
胸を貸すんじゃなくて背中を貸すっていいよね。
だってほら、泣き顔ってあんまり見られたくないじゃん?
2009/09/12
※こちらの背景は
M+J/うい 様
よりお借りしています。