心地よいと想い始めたのはいったいいつからだったろうか。
いつからかそこにあることが当たり前になった声は、どこまでも優しくどこまでも……










君を呼ぶ声







しとしとと降り続く雨はうっとうしく。時折強まる風は音を空へと流してしまう。
湿気は体にねっとりとつきまとい四肢に重だるさを与える。

「……でさ、ランボの奴がいきなり電源切るもんだから
せっかくラストまで行けそーだったのにおじゃんでさ」

三時間がんばったのにさ。ぷぅと頬を膨らませたツナ。
傘が邪魔して表情までは読みとれないけどきっとツナは俺の想像通りの顔をしていることだろう。

学校からの帰り道。
降り続く雨にとうとう野球部も練習は休み。
自主練してもよかったのだが獄寺がツナの家に遊びに行くとの声が聞こえて
さっさと荷物をまとめたのがつい5分前。ツナと獄寺と俺の三人で仲良く(?)下校中という訳だ。

「やっぱあのアホ牛ムカつきますね!!俺がシメましょうか!?」
「ちょ、いいよそんなことしなくて。ね?だからダイナマイトしまってってば!」
「いえ。あいつはいつかきっちりシメとかないとと思っていたところなんです。
十代目!俺に任せておいてください!!」
「それが一番やっかいなんだってば!」
「まぁまぁ。ツナがいいって言ってんだからいーじゃねぇか。
それとも獄寺はこの雨でイライラがたまってんのか?ん?」
「てめーと一緒にすんな。野球バカ」

ちらりとこっちを見た獄寺。ぼそり一言漏らすように吐き捨てると水たまりを蹴った。

「……なんか、獄寺君今日変だね。聞き分けがいいっていうか……」
「この雨だからな。さすがの獄寺も塞いでんのかもな」
「もー一週間だもんね。いー加減やんでくれないかなぁ」

空に浮かぶのは薄雲ではあるがしとしとと常に一定の降水をもたらす。
いつやんでもおかしくないのにいつまでも降り続く。
傘を差しても体を濡らす雨は知らず知らずのうちに気分を憂鬱にさせる。

「山本も?」
「え?」
「山本も塞いでるのかなって」
「そんな風に見えたか?」
「ううん。山本は表情読みにくいからわかんないけど、……何となくそんな気がしたんだ」

違った?


「……んーどうかな。俺はそんなつもりはないんだけどな」

けど

「ツナが言うならちょっとばかし沈んでるんかもな」



本当は

本当は

沈んでいた。

でも気づかせない自信はあったのに。
というか今日になるまで自分でも気づいていなかったんだけどな。
ツナの超直感ってやつは侮れないな。

「あ、あのさ」

ツナは俺の目の前に立ち照れくさそうに頬をかく。

「俺にできることあったら言ってね。俺たち……し……親友でしょ?」

恥ずかしいのか赤らんだ顔が可愛らしくて。

愛おしかった。

「……あぁ。そうだな。親友」

わしわしっとツナの頭を撫でてみた。

これが照れ隠しだとバレないことを祈りながら。


「気にするなよ。この雨で思いっきり野球ができなくて鬱憤溜まってるだけだからさ。
雨が上がったらこんなのすぐに元に戻るからよ」
「…ほんと?」
「ホントだって。ほら、ぼーっと突っ立ってると置いてっちまうぞ」

体にまとわりつく湿気を振り切るかのように俺は駆けだした。
突然のダッシュにツナの反応は遅れる。もともと俺の方が脚速いしな。

「え、あ、ちょっ!待ってよ山本!」

あわてて俺の後を追ってバシャバシャと水を跳ねる音が聞こえてくる。


練習できなくて鬱憤が溜まっているなんてもちろん、嘘。
そんな理由なら今日も自主練しているはずなのだから。
苦しい言い訳だが本当の理由を知られるのに比べたら幾分ましである。

だって、恥ずかしいだろ。

ツナの声が聞こえなかったから、なんて本人に言うの。



雨音はその雨粒の中に音を取り込むように
あらゆる音を吸い取ってしまう。
たとえば日々の喧騒だったり。
たとえば小うるさい先生の小言だったり。

たとえば、君の声だったり。


なによりも心地いいおまえの声が聞こえないと、
とたんに不安になってしまう自分に気づいたとき野球になんて手が着かなくなった。

いくら素振りをしたって頭をよぎる彼のことを振り払うことはできなかった。

骨折したときでさえ、こんなにも心乱されることなんて無かったのに。

それくらい、俺の中でツナの存在は大きなものになっていた。



「山本ってば!」


彼の声はここちいい。

さながら、一度知ったら抜け出せない麻薬のような甘美な響き。



もっと

もっと

その響きで俺を呼んで。

そうしたらきっとこの雨は晴れるから。









梅雨ですね、ってことで。

季節ネタをば。

雨といったらやっぱり山本だろうということで。

正直相手は誰でもよかったんだけど(殴



節操のなさに最近拍車がかかっています。

さかきの中に固定CPがないから最早カオス。

でもそんなのかんけぇねぇ!

では済まされないしもう古いよ。。



雨の日は周りの音が聞こえにくくなるんですよね。

雨音だけに侵食される世界。そんなイメージ。

・・・・・・・・・・・さかきだけ・・・・?



今さら気づいたけど

獄寺がテラ空気(笑)

ドンマイドンマイドンマイドンマイ、まけない〜で〜ぇ〜!

2008/06/16





※こちらの背景は NEO-HIMEISM/雪姫 様 よりお借りしています。




※ウィンドウを閉じる※