終礼の鐘の音が鳴っていくらもしないうちに姿を現した彼。
僕はと言えばその鐘がなる1時間も前から校門の前でスタンバイ。
早すぎる、と犬と千種に言われたけれど、もし綱吉君の授業が早く終わりことなんてあったら一大事。
用意周到なこの僕が綱吉君を待たせるなんてそんなことできるわけがありません。
かぼちゃが笑う、聖なる夜に
「っはぁ、はぁ・・・・・骸・・・・・お前何でここにいるの・・・?」
「もちろん、綱吉君を待っていたんですよ」
「待ってたって、今日うちに来るって言ってただろ?」
「少しでも早く綱吉君に逢いたかったんです」
「だからって1時間も前から校門で待ってなくてもいいだろ!雲雀さんすっごい不機嫌で怖かったんだからな」
雲雀雲雀、いつもなら聞くだけでもいらいらする名前ですが不思議と今日は心穏やか。
だって今日は・・・・
「つっなよっしくーんv」
ぶつくさ文句を言う綱吉をぎゅっと抱きしめた。
人前でこういうことをするのに慣れない綱吉はしきりに周囲を見回している。
幸いまだ終礼してほとんど時間が経っていないため生徒の姿はまだない。
「ちょ!離れろよ、骸!」
「だってお泊りですよ。お泊り!」
「お泊りって、お前いつも勝手に部屋に忍び込んで布団に潜り込んでるじゃないか!」
「だからこそです!!」
ぐっと握りこぶしを作って。
わなわなと肩を震わせて。
歓喜の涙を流しながら骸が叫ぶ。
「今日は初めての綱吉君公認のお泊りなんです!
変態と罵られながらも毎夜窓から侵入し続けた日々よ、グッバイ!!」
「それ間違いなく犯罪だから!!」
「ですから、今夜一晩中離してあげませんからねーvv
今まで溜めに溜めた想いの丈を受け取ってくださいね」
そんなもんは要らんと一蹴したくなるが、どうにも嬉しそうな骸の顔を見てしまうとそれも出来ない。
長身の男がすりすり頬を摺り寄せてくる様なんてはたから見たら異様だろうけど
なんとなく憎めないというか、大型犬になつかれている気分になる。
尻尾があれば間違いなくパタパタ大きく振られているはずだ。
とはいってもいつまでもこんなことをしていたら他の生徒(と言うか雲雀さん)に見つかってしまうかも。
擦り寄る骸を力ずくで引き剥がし、ともかく!と言葉を続ける。
「こんなべったりされたら歩けないよ」
「だったら僕が抱き上げてあげましょうか?」
「い、い、い、いらないよ!!そんなの!」
「じゃ、仕方ありませんね」
不服そうにぶーたれるかと思ったのだがあっさり引き下がる。
代わりに綱吉の右手に指を絡めて優しく握ると、顔の前まで持ち上げる。
「ではこれで」
軽く、触れるだけのキスが甲に落とされる。
・・・・・・・・こっちの方が恥ずかしいかも・・・・・・・
抱き上げられるよりはマシかと思い直してコクリ小さく頷く。
「綱吉君の家でいっぱい抱きしめて上げますからねvv」
耳元でそっとささやく。
極上の笑顔でさらりと恥ずかしいことを言ってのけた。
そんなこと言われたらますます顔が上げられないよ・・・。
■■■ ■■■
部屋に入るやいなや、鞄を投げ出して骸が唇を合わせようとする。
「こ、こらっ・・・いきなり・・・・」
「ココなら五月蝿い雲雀恭弥もいませんし。ね?」
ちゅ、ちゅっと
啄むだけのキスが何度も落とされる。
片手は後頭部。もう片手は腰をしっかりと抱き留めており避ける事も出来ない。
数回のキスで観念したのか、ふっと体の力が抜かれ代わりに甘い吐息が漏れ出る。
「・・・ん・・・・骸・・・・」
答えるように舌が口内への侵入を許す。
綱吉の手が骸の背中をぎゅっと握った。
絡み合う舌。
吐息に混じって卑猥な水音が小さく響く。
「・・・・続き・・・・しましょうか・・・?」
腰に添えられていた手が前に回され、綱吉のものに触れる直前。
「・・・っ、俺、飲み物取ってくる!!」
ドンと胸を押され距離を取られた。
うつむき加減で顔を隠そうとしているけれど、その頬は紅潮しているのが見て取れる。
あえて何も言わずに微笑みで返してやれば、耐え切れなくなって綱吉は部屋を飛び出ていった。
バタン!とドアが完全に閉まるのを聞いて満足げに笑う。
「クフフ・・・・。まぁいいでしょう。今夜長いですからね」
「それにしても性急過ぎじゃないか?」
「綱吉君は初心ですからね。これ位がちょうどいいんですよ」
「霧はいつまで経ってもその押しの強さは変わらないな」
「押しが強い?クフフ、ご冗談を。これは綱吉君への溢れんばかりの愛ゆえ・・・・・に・・・・?」
綱吉が退室した今、骸は一体誰と喋っているのか?
リボーン?いや違う。
彼はもっと高圧的な喋り方だ。
一体・・・・・
第一この部屋には誰もいないことを確認したのに。
なら幻聴か?
いやいや。仮にも幻術使いのこの僕が幻聴に惑わされるなんて・・・・
得体の知れない何かを確かめたいような、知りたくないような・・・・
でも確かめずには要られない。
声のするほうにゆっくりと顔を向ける。
「・・・・・・・・・・・ぅおうっ!?な、何ですかあなたは!!」
確かに、そこにはいるはずのない人影が存在していた。
物憂げな瞳で骸を覗き込む一人の男。
予期せぬ人物に声が上ずってしまう。
「ん?俺か?・・・・・初代ボンゴレ、ジョットだ」
対照的に冷静に言葉を返すその男。
自らをジョットと名乗ったが、何かに引っ掛かる。
「・・・・・ボンゴレ・・・初代・・・?」
「あぁ。]世の血縁だ」
面影があるだろう?
そういって己の顔を指差した。
確かに、言われてみれば面差しに似通った部分が多いことに気付く。
「しかし何だってT世がこんなところに・・・」
「それはほらあれだ。今日は10月31日じゃないか」
「・・・・・ハロウィンだからだと・・?」
「そぅそぅ。そんな感じだ。たぶん」
「なんてテキトーな・・・・」
「ハロウィンに化けて出るのは死者だけだろ」
今時誰がそんなことを信じると言うのか。
昨今のハロウィンなんてお菓子を貰うための子供の遊び。
もしくは悪戯したい盛りのカップルのためにあるようなイベントだ。
そもそもこんなのが綱吉の血縁だなんて信じられない。
「お前が信じようが信じまいが、俺が初代で、あいつの血縁であることは変わらないぞ」
読心術まで搭載しているらしい。
なかなかハイテクだ。
「俺はインテルか」
しかもわりと最新機器。
「そもそもお前だって輪廻転生とかいって現代に生きる俺のき・・・・・」
「はい!」
「ん?」
問答無用で言葉を切って、ポケットから取り出した小さな包みをジョットの手の中に押し付けた。
はて?と不思議に思って中を覗けばそこには小粒のチョコレート。
「なんだこれは」
「チョコレートです」
「そのくらい分かる」
馬鹿にしているのか、そう続けようとしたら骸が先に口を開いた。
「今日はハロウィンなのでしょう?そしてあなたは化けて出たお化け。
お化けの望みはtrick or treat!お菓子か悪戯か。
ですから、そのチョコあげるからさっさとココから消えてください。
僕はこれから忙しいんです!!」
「]世との初夜のためか?」
「///あなたには関係ないでしょう!!」
第一なんでこの男が僕たちの関係を知っているのか・・・・
まだ未行為と言うことまで・・・・・
あの手この手で周囲を騙してきたのだ。
全ては雲雀恭弥をはじめ、綱吉を狙う悪い虫を追い払うため。
この事実は二人の(主に骸一人の)トップシークレット。
それを知っているなんて、一体・・・
「そりゃぁ。初代だもん」
ぷー、と口を尖らせる。
・・・・・可愛くない!!!!!!!
「どんな理屈ですか!?」
「継承者の相手を見定めるのも俺の役割だ。なんせボンゴレの命運に関わるからな」
「貴方に見定めてもらう必要なんかありませんよ。僕たちは相思相愛なんですから」
「・・・・・・・・・・いやー、どうだか・・・・・・」
こ!の!お!と!こ!はっ!!!!
思わず拳を振り上げてしまう。
おっと。
いけないいけない。
大人の男は常に沈着冷静。
滅多なことで取り乱しません。
ざっつおとなの対応!
「何を根拠にそんなことを?」
深呼吸を挟んで無理やり心を落ち着かせた。
「『パイナップル嫌いなんだよね』これ、]世の口癖な?」
「ぶっっっ!!!!」
「『サンバとかもう見たくない』とも言っていたな」
「ぐはっっ!!!!!!」
「ちなみにあいつは骸の漢字が書けないでいる」
「はぅっっっっっっっ!!!!!」
撃沈。
完敗。
ぐうの音すら出ない。
「・・・・僕はこんなにも綱吉君を愛していると言うのに・・・・・綱吉君は!綱吉君はっ!!」
よもやこの気持ちが独りよがりのものだったなんて・・・・。
「まぁそんなに落ちこむな。霧」
「貴方に・・・貴方に僕の何が解るって言うんですか!?」
「いやさっぱりわからん」
・・・・空気読まんかいゴルあぁぁぁぁっ!!!!
シリアスな空気すら作らせてはもらえない。
この男・・・・・デきる!!
「ノリノリだな」
「誰のせいだと思ってるんですか・・・」
この男との会話は著しく気力を消耗する。
疲弊感が尋常ではない。
ボンゴレの総大将。一筋縄ではいかないようですね。
「・・・・・・・・ふむ・・・・・・道理で]世があんなことを口走るわけだ・・・」
「・・・・な、なんですか?」
「いやなに。気にするな」
綱吉君が一体何を?
思わせぶりな口調が気になる。
「気にするなといわれて気にならない人がいますか。はっきり言ったらどうです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・後悔しないな・・・・・・・・・・・・・・?」
「うっ・・・・・」
なにやらいやな予感が・・・・
ずりずり後退すればずずいと一歩詰められる。
手はさっきから嫌な汗で湿ったままだ。
「本当にいいんだな?」
「・・・・あ・・・・・いや・・・・・・そのぉ・・・・・」
何故だかよく分からないけれど聞かない方がいい気がする。
自分が致命的なダメージを負うな気がする。
彼の全てを見透かしたかのような瞳に・・・・・恐怖した。
「やっぱりやめておきます・・・・」
「なんだ、せっかく]世が雲とよろしくやってるって教えてやろうとしたのに」
爆弾投下!
言ったよこいつ!
結局言いたいだけじゃねぇか!
綱吉君が雲雀恭弥と交際?
あぁっ!やっぱりろくでもない情報だったよ!!
だから聞きたくなんかなかったんです。
あの二人が交際しているだなんて・・・
前々から怪しいとは思っていましたがまさか本当に・・・・
思えば今日だって・・・・・・・・・・
・・・・・・って、あれ?
「・・・・・こうさい・・・・?」
「交際」
「まじ?」
「マジ」
「・・・・・・・」
「]世が雲にあい・らぶ・ゆーv」
「・・・・・・・・・・・なんですってぇぇぇえぇぇっっっつっ!!!!!!」
「ちょっと骸?何騒いでるの?」
グッドなタイミングで綱吉登場。
この場合バットタイミングというべきなのかもしれないが・・・
「・・・・っ綱吉君の・・・・浮気ものーーーーーっ!!ふけつーーー!!ぐれてやるーーー!」
「な、なに!?」
こちらの顔を見るやいなや、窓から飛び出す骸。
飛び出す寸前に間に飛び込んだのは瞳からこぼれる雫。
事情も事態もわからず困惑。
俺が何をしたって言うのさ。
とゆーか何がどうなったらそんな結論になるんだ!
「意外と根性がない奴だな・・・・そんなことでは・・・・・」
無人のはずの部屋から聞こえる人の声。
そして聞き覚えのあるこの声。
とたんに骸のとっぴな行動の元凶に気付く。
見つけたくないものを見つけてしまった気分だ。
「プリーモ・・・・・何しに来たんですか?」
「・・・・・おぉ!]世、久方ぶりだな」
「久しぶりも何も、あんた昨日も勝手に出てきてたろーが」
「・・・・・・そだっけ?」
こいつは・・・・!
我が先祖ながらこのすっとぼけっぷり。
間違いなく父さんはこの人の血をついでるよ。
「とまぁ冗談は置いておいて」
冗談か!わかりにくい!
この男は全てを真顔で言うものだからその辺の判断が出来ない。
・・・・・・なんてやりにくいんだ・・・・!!
「]世が見初めた男がどんなものか見に来たのだが」
「骸・・・ですか?」
「うむ。なかなかいい奴じゃないか。肝心なところでヘタレるがな」
「・・・・・あいつに何言ったんですか?」
「ん?『]世はお前のこと好きじゃないゾ』と」
「だぁぁぁぁぁっっっっ!!また七面倒なことを!!」
通りでさっき様子がおかしかったはずだ。
今すぐ追いかけて事情を説明してやらないと。
「霧のところに行くのか?」
「そうですよ。プリーモが余計なことするから」
「なら俺は帰るとするか」
「ていうか、近所に買い物するノリで出てこないでください。オネガイシマス」
あんたはとうの昔に死んでんだろーが!
死人がほいほい出てきたら世界は大パニックだっつーの。
「仕方ないだろう。今日はハロウィンなんだから」
「ハロウィン?」
「そうだ。お化けがお菓子と悪戯を求めてあの世から舞い戻る日。
こんな日くらい出てこなかったらそれこそ死人失格だろう」
死人失格になったら何になるのか、綱吉の思考は正直上の空。
この人に付き合ってたら精神が持たないことくらい承知している。
それを知ってか知らずか勝手に話し続ける。
唯一つ重大な問題があってな。
言いながら急に真剣な顔つきでポケットから小さな包みを取り出した。
「幽霊だからお菓子は食えんのだ。なので悪戯をするしかないという悲しい真実」
だからこれはお前にやろう。
では。またいずれ。
「へ?あ、ちょっと!・・・・・・ったく」
プリーモのいたところにちょこんと残されたお菓子の包みとジャック・オ・ランタン。
にへらと笑うかぼちゃの後ろ側にはボンゴレのマークとジョットの文字。
「あの人は・・・・・」
本当に自分勝手なんだから。
プリーモ、知っていますか?
ジャック・オ・ランタンってお化けを寄せ付けないためのものなんですよ。
苦笑しながら、なんだか憎めない顔つきのかぼちゃを机の上にそっと置いた。
受け取った包みの中にはチョコレート。
一つ口に放り込めば、ほのかに広がるパイナップルの酸味。
きっとこれは骸がプリーモに渡したに違いない。
さて!勘違いの骸を説得して、ココに連れ戻してやらなきゃ!
そして今日こそ!!!
今宵に抱く想いを胸に、綱吉は部屋を飛び出した。
■■■ ■■■
『ジョット?また]世のところに行っていたんですか?』
『あぁ。霧に逢いにな』
『霧?』
『9代後でも、霧は大空にベタ惚れだ』
『・・・・・そうですか』
『・・・・・・大空が霧に惚れてるのも変わり無かったがな・・・・』
ハロウィン企画と銘打つほどハロウィンしてなかった・・・・。
なにはともあれ!
当サイト初の初代様の登場です。ぱちぱちぱち。
うっはー。喋り口調わからねー!!(笑)
ノリもわからなーい!
試行錯誤で奮闘の跡が随所に見られるイタイ作品となりました。
うう・・・・。ドンマイ自分。
きっと骸はこの後ツナに慰められて機嫌を3秒で直します。
おうちに帰って情事に勤しもうとしたらまた初代が出てきてデバガメされてればいいと思います。
後。
分かりにくいだろうけどここでは骸=転生した初代霧とゆー特別ルール。
最後に初代と話しているのも初代霧のつもり。
今も昔も大空と霧は仲良しなんだよってのを描きたかっただけなんだ。
この作品はくう様のみお持ち帰り可です。
こんな感じでよかったのかしら・・・・がたぶる)))
2008/10/30
※こちらの背景は
空に咲く花/なつる 様
よりお借りしています。