世の中は現在チョコレート戦線の真っ只中。
お店には甘い香りが立ち込め、ショウウインドウには色とりどりにラッピングされた商品が鎮座している。
一般家庭においてもキッチンで苦戦する女の子の声が聞こえてくる。
それは沢田家でも変わりなく・・・・・・・・・・・

「と言うわけで、俺はここであえて原点に立ち返ることの重要性を問いたいと思う」

なかった。




純情 very berry







「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
「そもそも、バレンタインとは何か。はい!獄寺君」

ずびしっ!と指差しで指名され、思わず姿勢を正して獄寺が答える。

「俺と十代目の愛を確認するための日です!!」
「予想通り全く意味のない回答有難う」

一切の臆面もない全力の回答を軽く横に流して、俺は彼を無視することに決めた。
横でうざったい位にショックを受けている犬の姿が視界に入ったような気もするがあえて気にしないことにしておく。
すると今度はさも当然、といった具合で骸と雲雀が口を開く。

「バレンタインとは、元々はローマ帝国で当時禁止されていた兵士の婚儀を秘密裏に行っていた 聖ウァレンティヌスが処刑されたことを受けてキリスト教徒がその思いを受け継いで 『恋人同士の日』としたのが始まりと言う説がありますね」
「もっとも、その信憑性もあまりなくてカトリックでのウァレンティヌス記念日は廃止されてしまったらしいけど」
「博識ぶりたいならwiki検索しながら答えないでください」

光速の指使いで携帯でアクセスしたらしい。
ちなみに俺もそのページを見たから内容は把握している。
しかし俺が欲しいのはそんな答えではない。

「俺が言いたいのはその下です!ちょっと貸してください!!」

雲雀の携帯を奪い取ると二人に勝るとも劣らない速さで十字キーの下を連打する。
wikiを開いてくれたのは好都合だ。
このページの下には確かアノ記述があったはず・・・・・・・、あった!!

「これです!!」

泣く子も黙る雲雀の携帯だと言うことも忘れてバシンと床に叩きつけるかのごとく5人の前に突きつけた。
どれどれ?と小さな画面を5人の男が額を寄せ合って覗いてくる。
正直あんまり(俺的に)美味しい構図ではなかった。
5人を代表してなのか山本が例の部分を読み上げる。

「なになに?各国でのバレンタインデーの形・・・・・・・女性がチョコを贈る習慣は日本で始まったもの。欧米では贈るものはチョコに限らない」
「その通り!!」
「こんな基本情報を取り出してなんだと言うのです」
「まさか知らなかったとかいうわけじゃないよね、綱吉?」
「極限に意味がわからん!!!!!!」
「俺は別にチョコじゃなくても構いません。十代目の愛さえ頂ければ十分です!」
「それだっ!」
「?」

やっと出た回答に俺一人テンションをもりあげた。
対する5人はわけがわからないと言った表情を浮かべている。
俺はまくし立てるように言葉を続ける。

「そうなんだよ。バレンタインていうのは女の子からあげるのが日本の風習なんだよ。 なのにお前等ときたらこぞりこぞって家にきやがって!家にきたら俺が皆にチョコを渡すとでも思ってるのか!! なんで俺が皆にあげなくっちゃいけないんだよ。俺、男だよ! よく考えたらリアルで男同士とかイロイロまずいでしょ!? 二次元だから許されるとか思ってるんだろうけど俺はそんな業界の風習に流されたりしないぞ! 絶対あげない!」
「ちょっ!?綱吉君!その発言は同人界を敵に回す発言ですよ。イロイロまずいんで撤回してください!」
「うるさーいっ!うるさいうるさい!どんなネタも出尽くしてる感があってこんなんしか出なかったんだ! 今更引っ込みがつくか!!」
「定番でいいんだよ。別に目新しさとか求めてないし」

だから、と手をすっと差し出す。
この手に何を置けと。
チョコか?チョコなのか!?
今やらねーっていったばかりじゃねーか。
話し聞いてたのかこのやろー!

「なに?なんか聞き捨てならない心の声が聞こえた気がしたんだけど」
「気のせいでっす!!」

超速でその場にひれ伏したのは言うまでもないだろう。
俺は心の中ですら罵倒することを許されていないのか・・・・・。
え?俺仮にもこの人たちのボスなんでしょ?
この扱いどういうこと。

「下剋上っていい言葉だよね」
「はぁ・・・・・・そう・・・・・ですね・・・・」

俺は貴方の上に立てた気持ちになったことなんて一度もない。
そう心で唱えようとしてやめた。
負け戦は好きじゃない。
負けるのなんて人生だけで十分じゃないか。
やり取りを見ていた山本はあいも変わらずマイペースで聞いてくる。

「でもツナ。世の中友チョコとかもあるだろ?それに外国じゃ男から渡すのも普通って聞いたぜ?」

意味合いなど構わない、重要なのはチョコを貰ったという既成事実なのだと。
言葉には出さないけれども山本を取り巻く黒いオーラを俺の超直感は見逃さなかった。
正直なところ腹黒い奴ほど扱いに困ることはない。

「そうかも知んないけど、日本じゃ一般的じゃないし、それにあくまでも男女間のやり取りじゃん」

ついでに言うなら今年のトレンドは『あえて男から』らしい。
正直どうでもいい。
そんなものこいつ等を助長するだけだ。
なんていい迷惑。
そんなもの打ち立てたお菓子会社はきっとボンゴレの敵に違いない。間違いない。

「結局君は何が言いたいんですか?綱吉君」
「言いたいことがあるならはっきり言ったらどう」
「極限に漢を見せろーーーっ!!」

お兄さんの渇が俺をたきつける。
ついに・・・・
ついに俺の決意を見せるときがやってきたようだ。
ゆっくりと
慎重に言葉を選ぶ。
そして
心の限り俺は叫んだ!!



「俺は・・・・・・俺は総受けとか、ショタとか言われるのを脱却したいんだっ!!」



言った!
言ってやった!
これが超死ぬ気モードによって得た俺の新しいスキル!
ほら見ろ!皆俺のあまりの気迫に言葉も出な・・・・・・

「どんな世迷言を言うのかと思えば」
「くふふ。綱吉君、今日はエイプリルフールではないんですよ」
「ツナの冗談っておもしれーのな」
「いつの間にそんなスキルを会得したんだ?沢田」
「十代目・・・・今のギャグ、最高に面白かったっす!!最高です!!」

全く誰も本気にしていなかった。

「え?ちょ!」

何この展開?
いろいろとおかしいよね?

「チョコがないならいっそ身体払いとかでも僕はもちろん一向に構わないよ」
「おれもおれも〜」
「綱吉君と過ごす熱い一夜・・・・・・・あぁ・・・・考えただけでもぞくぞくしますね・・・・・」
「十代目と俺がとうとう一つに・・・・・・ぐはっ!!!」
「拳を交え、そして身体を交える。そういうことだな!」

ついには勝手な妄想まで繰り広げだす始末。
もういやだ・・・・。
こんな部下・・・・。
無意識に携帯に伸びた手が022-022を打ち込もうとしたところで、はたとあるものに眼が止まった。
それは机の脇にまとめて置かれた紙袋。
そのどれもに綺麗にラッピングされた箱が収められている。
そうだ。
俺にはこれがあったじゃないか!
俺の最大の心の支え。
これさえあれば、俺は今までの俺を脱却できる!!
グッバイあの日の自分。
こんにちは新しい明日。

「皆これを見てよ!」

怪しい妄想で彼らの脳内で好きなようにされているであろう俺を吹き散らすように俺は声を張り上げた。
同時に心の支えを彼らの目の前に突き出す。
勢い余っていくつかの袋から箱が落ちてしまった。

「今度はなんだ?」
「これは・・・・・チョコの箱・・・・?」
「なんだちゃんと用意してたんじゃない。はじめっから素直に出しておけばよかったのに」
「違います!これは俺が貰ったんです!!」

さも当然といった風に箱を懐にしまおうとした雲雀から慌てて奪い返す。
よかった。割れたりはしてないみたいだ。
ほっ、と息をつくと大事にそれを抱きしめた。

「おれ、今年は初めて母さん以外から初めてチョコ貰ったんだ! クロームにビアンキでしょ?あとイーピンとハル。それから・・・・・・きょ・・・・・京子ちゃんからも・・・・・」

ヒロイン一同からのチョコ。
これは完全に俺の時代が来たととっていいだろう!
俺の名が右に来る時代は終わったんだ。
これからは左側に来るんだ!
ノーマルカプ万歳!!
もういっそ総攻めでもいい!

いや、嘘だけど。

「皆が俺のこと想ってくれてるのは嬉しいんだけど・・・・・俺も男だから、 やっぱり女の子との甘酸っぱい青春をエンジョイしたいし、それを望んでいる人も多いと思うんだ。 主にこれ書いている人とか書いている人とか書いている人とか」

その期待にはこたえるべきだと思うんです。
それが人気投票1位の役割っていうか、むしろ義務?


「あ・・・・・・そのパッケージ。僕がクロームに託した奴ですね」
「・・・・・・・・・は・・・・・?」

まじまじと俺が胸に抱く箱を眺めていた骸がとんでもないことを口走った。
なん・・・・だって・・・?
お前・・・・今なんて・・・・・?

「いえ、だって直接渡そうとしても受け取ってもらえないだろーなーと思って 今年は一工夫凝らしてみました☆くふ」
「はっ!?渡すときになんかちらちら紙を見てたけどあれって・・・・・・」
「口下手なクロームの為に僕が書いたカンペですvv」

今知らされる真実。
事実は小説よりも奇なり。
俺・・・・・一つ賢くなりました。

「ちなみに俺のもビアンキさんから渡ってるはずなのな〜」
「山本も!?」
「渡そうとしたら『あんたが渡しても効果は薄いわ。私に任せておきなさい』ってな」
「そういえばビアンキが作ったって割に見た目が普通だった・・・・・・」

俺の目は節穴か。
ダメツナここに極まれりだな。

「!?・・・・・・まさか、ヒバリさんも・・・・・・?」
「ピンが『ヒバリさんの為に一肌脱ぎます!!』って奪って行ったんだよ」
「くっそ・・・・・・道理でやたら上目使いで攻めてくると思ったんだよ。お兄ちゃんの心理を逆手に取るなんて!!」

僕は妹に恋●する的な展開も無きにしも非ずとか考えたの誰だよ!

俺だよ!!ちくしょーーっ!!

「ちなみに言うと俺も・・・・・」
「あぁ、獄寺君のはハルが責任をもって処分してくれたから」
「なっ!?」
「俺も極限に京子に託したぞ!」
「あ・・・・・・・あぁぁっぁぁぁlっぁぁsdvfbgんm・・・・・・」

もういっそ死んでしまいたい。
義理でもいいから京子ちゃんからチョコが貰えたと思ったのに・・・・!!

「第一何でお兄さんが俺に・・・・・?」
「知らん!作者の都合だそうだ!!」
「そんな!?」

まさかの了ツナなのか・・・・・?
それが望まれているのか・・・・?
わからない・・・・一体どうしたらいいのかわからない・・・・・

とりあえず

「俺の純情をもてあそぶなぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」



その後10数分間の俺の記憶はないのだが、あの雲雀さんを含め全員が俺の足元で土下座をしていました。
何があったのかはどんなに問いただしても誰も教えてくれませんでした。


   ■■■   ■■■

   おまけ




皆がいなくなった自室で。

「はぁ・・・・・・結局今年は母さんとハルからの二つか。十分ちゃ十分なんだけど・・・・」

ぬか喜びした手前、どうにも寂しさがこみ上げる。
母さんを除けばチョコゼロ記録を更新していた自分だけにこのダメージは甚大だった。

「ハルからのチョコ、嬉しくないわけじゃないんだけどさ。やっぱり・・・」

欲しかったなぁ。京子ちゃんのチョコ。
ため息一つ。
いくら思い描いたってチョコが現れるはずもなく。
俺はばらばらになってしまった袋と箱をそろえ始めた。

「これは母さんからで・・・・・・・これはクロー・・・・骸からだったな」

現実を口にすると余計に虚しい。

「山本で・・・・・・・・雲雀さんだろ・・・・・・・んでこれがハル。最後がお兄さん・・・・・あれ?」

袋は全て埋まった。
なのに余った一つのチョコ。
それはどの箱よりも小さくて、でも他のどれよりも眼を引きつけた。

「誰からだろ・・・・?」

ない頭を捻っても答えが出るはずもない。
いぶかしんで包みを開くと、可愛らしいハート型のチョコが一つ丁寧に入れられていた。
甘い香りに誘われるように一口かじる。
口に広がるイチゴの酸味。

「あ・・・・・美味し」

チョコに包まれるように入っていたのはクリームチーズとイチゴを合わせたペースト。
それはまるで青春の甘酸っぱさ。
素直になれない子供の恋愛のようで。

何故だか京子ちゃんの顔が頭をよぎった。
幸せそうに優しく笑う顔を思い出すと

(なんか、今日一日のことはどうでもいいや・・・・)

無性に幸せな気持ちになった。


     ■■■   ■■■

同日同時刻。

「ツナ君、気付いてくれたかな?」

ひっそりと忍ばせた私の想い。
気付いてくれるといいな。

(でもお兄ちゃんがライバルだなんて・・・・・。私、負けないんだから!)



         Happy Valentine Day END!









スランプな感が否めない。

なんか今までと書いてる感じが違う・・・気が・・・・す・・・る・・・。



頭悪そうなタイトルですまーん。

なんか思いつかなかったんだ。

実はおまけ部分を書きたいがための前半でした。

微妙ですまーん!

正直了ツナとかどう扱っていいのかすらわからない。

もう皆ノマカプで幸せになっちゃえよ!

そして獄寺の扱いがひどくてすま―ん!

悪気はないんだがいじりやすかったんでこうなった(殴

2009/02/10





※こちらの背景は 空に咲く花/なつる 様 よりお借りしています。




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