アジト内の談話室。
普段は人気の少ない場所なのだが、今日に限っては賑やかしい。
無機質は部屋には似つかわしくないと言えるくらいに場違いな明るい声が飛び交っている。
一番声が大きいのがハルだ。
それに次いで良く聞こえてくるのは京子ちゃん。
時々口を挟んでるのがイーピンとビアンキ。
声は聞こえないけれどメンツから考えるとクロームも一緒だろう。
女の子が揃って無邪気に談話だなんて、微笑ましい光景だ。
―――隣に立っているのが雲雀さんじゃなければ・・・・・・

「・・・・・・・・・」

雲雀さんの冷たい視線が突き刺さる。
そんな!俺がしゃっべているわけでもないのに!?
ギロリと睨まれた視線からは
(僕の目の届く範囲で群れるだなんていい度胸だね?)
と言外に訴える何かを感じる。
高速の勢いで首を振って
(知りません!俺は関係ないです!)
否定の意を唱えた。
俺たちの無言のやりとりが廊下の角でなされていることなど知る由もない女性陣は話を続ける。

「はひぃ〜、やっぱり大人の女性は違います〜。ビアンキさんの恋愛歴すごいです〜」
「でもすごいと言えば、イーピンちゃんもすごいよね?」
「え?私ですか?」
「だって、雲雀さんとお付き合いしてもう10年近いでしょう?」
「そう・・・・・ですね。そのくらいでしょうか」
「今時10年も続くカップルなんてなかなか居ないわ」
「仲良くする秘訣とかあるの?」
「そんな・・・・・・、私はいつもヒバリさんについていくだけで精一杯ですし」
「俺は、気に食わないけどな」

不意に、新たな声が混ざり込む。

「あ、獄寺さん・・・・・・と、はひぃ!エロい人です!」
「山本君にお兄ちゃんも」

ひぃぃぃっ!!このタイミングで全員集合〜!?
やばいって、雲雀さんの前で群れたりしたらだめだって!!
ほらっ!この人、静かにトンファーとか握りしめちゃってるから!
みんな早く解散してぇぇぇ!!

しかし当たり前だけどそんな俺の心の声が届くわけもなく。
新たに4人加わった談話室は若干の狭苦しさの中、会話は進んでいく。

「何が気に食わないんですか?」
「あいつとイーピンが付き合ってるってことに決まってんだろ、アホ女!」
「はひ!?ハルはアホ女じゃありませんっ!」
「はは、まぁまぁ。でも俺も獄寺の意見に賛成かもなぁ」
「・・・・・・皆さん、ヒバリさんが嫌いなんですか?」
「そーいうんじゃなくてよ。なんつーか、お前って俺たちの妹分だろ?それを取られたようなもんだからな」
「極限わかるぞ!その気持ちっ!」
「ふふっ。お兄ちゃん、私がツナ君と付き合うのに最後まで反対してたもんね」
「相手が極限いい奴とわかっていても、なかなか割り切れないものなのだ!」
「俺としても、幼なじみが遠い存在になったみたいでしたね」
「遠い存在って・・・・・・ずっとツナさんの家に居候してたじゃない」
「精神的な話」
「?」
「ともかく、俺はあいつが気にいらねぇ。あーゆー奴ほど気にいらねぇことがあるとDVに走りやがるんだ」
「ぼ、ぼ、暴力行為ですか!?デンジャラスです!」
「いえ・・・・・・ヒバリさんは手を挙げたりしてませんて」
「甘いわよ、イーピン。男なんて結婚したらあっさり掌を返すような生き物なのよ」
「ビアンキが言うと説得力がすげーのな!」
「でも・・・・・・そうなると心配ですね・・・・・・雲雀氏は元々気性の荒い人ですし・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

「「「「「「「・・・・・・家庭内暴力・・・・・・」」」」」」」

「だから、大丈夫ですって」
「・・・・・・これは・・・・・・改めて雲雀さんを問いつめる必要がありそうですね・・・・・・」
「そうね。イーピンちゃんは私たちにとっても妹みたいなものだものね」
「・・・・・・女の敵は・・・人類の敵・・・・・・・・・」
「何か変なことしてやがったらただじゃおかねぇ」

ひぃやぁぁぁっっっ!?!?皆っ!本人が目と鼻の先にいるんだよ!?
そりゃぁ俺だってイーピンのことが心配じゃないわけではないけれど、それでも本人に言及するなんてそんな大それたことできないし!
したら命なくなるし!

恐々と。
とにかく最小限の動きで。
動いていることすら悟られないくらい最小の動きで。
隣に立つ男を見やる。

「あの・・・・・・雲雀さん・・・・・・?」
 
目の前で群れる小動物にただならない怒りを感じているのかと思いきや。

「・・・・・・・・・」

意外にも、静かに皆の話を聞いていた。

「雲雀・・・・・・さん・・・・・・?」
「君も?」
「え・・・?」
「君も、あの子の事、心配してるの?」
「え、いや、まぁ・・・・・・そりゃぁ、多少は・・・・・・」
「そう」

握り締めていたトンファーを下ろす。

「バカな奴ら。僕がまともに答えるとでも思っているの?」
「えっと・・・・・・それって・・・・・・」

俺が質問するよりも早く、雲雀さんは廊下の角の向こうに姿を消す。
あっけに取られて動くことも出来ず、慌てて足を踏み出そうとした時には既に遅く。

「ズバリ!雲雀さんに質問があります!!」

唐突に。
とにかく唐突に。
前振りもなく。
そんな質問が振られていた。
全員を代表してなのか、ハルが先頭に立ってずびし!指を突きつけていた。

「雲雀さんはイーピンちゃんのどこにアイ・ラブ・ユー!なんでしょうか!?」
「・・・・・・・・・」

(・・・・・・ん、なぁぁぁっっ!?)
その場に居合わせた俺の脳味噌を止めるくらいの破壊力。
ド直球の質問だ。
それくらい衝撃だった。
雲雀さんに。
あの、雲雀さんに!
命知らずにもそのような質問が出来る人間がいるとは・・・・・!
いや、現実として目の前にいるのだけれど・・・でも!

「・・・・・・雲雀・・・返答次第じゃただじゃおかねぇぞ・・・」
「どう、ただじゃおかないの?」
「っ、このっ!」
「質問に、答えてください」
「・・・・・・君たちもおかしな事を聞くもんだね。どこが好きかって?そんなもの決まってるじゃない」
「と・・・・・・言いますと?」

問いつめる総勢8人を前に、一呼吸置き、ぐるり一周を見渡してから。
きっぱりと。
そりゃぁもうきっぱりと言い放つ。


「セックスの相性」


5秒。
きっかり5秒、時間が凍結した。
身動き一つ、声一つ上げられず、全員が全員停止した。
受け取った情報を、脳は理解するのを拒んだ時間でもある。

「ピン、帰るよ」
「あ、はい」

沈黙は、それを作った当人によって壊される。
雲雀さんはそれ以上俺達を相手にするつもりもないようで、イーピンを呼び寄せ立ち去ろうとしていた。

「・・・・・・っちょっ!待ちやがれ雲雀っっ!!」
「不潔です!不純ですっ!!」
「さすがにそれは犯罪なのな〜」
「極限に破廉恥だぞ雲雀ぃぃぃっ!!!」
「やっぱり男の目的なんて身体って事なのね」
「・・・イーピンと・・・雲雀氏が・・・そんな、あわわわ・・・・・・」
「・・・・・・私たちだってまだなのに・・・・・・」
「くふふ、僕の可愛いクロームに卑猥な言葉を聞かせるなんて言語道断ですね。勢い余って入れ替わってしまったじゃないですか」

浴びせられる罵倒とか批判とか嘆きとか、なんかそういった類のものを綺麗さっぱり無視して二人が、というより雲雀さんが一方的に背を向ける。
未だ廊下の角から動くことのできなかった俺の横に差し掛かり、雲雀さんが足を止めた。

「・・・・・・え〜と・・・・・・・・・」
「・・・何?」
「俺は雲雀さんを殴っておくべきなのか、お礼を言っておくべきなのか、よくわからないのですが」
「?」

顔も見ずに話す俺たちにイーピンが不思議そうな顔を向けている。

「どっちでもいいんじゃないの?」
「じゃぁ、殴らないけどお礼も無しで」
「あ、そ」

心底どうでも良さそうに答えて、今度こそ二人はさっさと歩いて姿を消してしまった。


 □ ■ □


「あの・・・・・・ヒバリさん・・・?」
「何?」
「何で、あんな嘘ついたんですか?」
「何のこと?」
「だって・・・・私たち、・・・・・・その・・・・エッチ・・・なんてしたことないじゃないですか・・・・・・」
「・・・・・・あぁ。そのことね」
「皆さんをわざと怒らせるようなこと言わなくても」
「いいんだよ、アレで」

遅れないように懸命に歩幅を広げて歩くピンの頭にポンっと手を置く。
適当に釘を刺しておかないとあいつらの過保護っぷりは治らないからね、と漏らしてもピンには何の事やらわからないらしい。
当たり前すぎて過保護に育てられたという意識がないのだろう。
向こうの兄姉も問題だが、こちらはこちらで問題だ。

「ま、君がみんなの前でのろけて欲しかったというなら、正直に包み隠さず語ってきてもいいんだけど?」
「・・・・・・例えば?」
「未だに手をつないだだけで顔を赤くするところとか、キスしたら恥ずかしさで2時間は布団かぶったまま出てこないとことか、そのくせ人の布団に侵入したがるとことか、そういうのが全部可愛いくてたまらない、とか」
「・・・・・・・・・や、・・・・・・めてください。私が・・・・・・恥ずかしいです・・・・・・」

真っ赤に染まった頬を俯けた。

「そういうと思ったからやめてあげたの」
「・・・・・・あの、ヒバリさんは、その・・・・・・ホントはそーゆー・・・エッチなこととか・・・したいんですか・・・・・?」
「したいよ」
「・・・・・・・・・」
「でも無理強いはしないってのが約束だから」
「・・・・・・誰との?」
「綱吉」
「なんでツナさんが」
「過保護の代表だから。約束を反故にしたらありとあらゆる手段を持って僕をこの世から排除するらしいよ」

今のあの男なら本気でやりかねない。
敵に回すと面倒くさいから、今回だって事前にフォローを入れておいた。

「僕としても無理矢理ってのは本意じゃないし」
「すみません・・・・」
「謝るくらいなら、さ」

屈んで、不意打ちのキスを、一つ。

「っ!?!?」
「これくらいは早く慣れてよね?」
「わっ!私がすみませんって言ったのはっ!」
「言ったのは?」
「私のせいでいつまでも童貞ですみませんってことです!!」
「・・・・・君も言うようになったね・・・・・・。けど、せめて操立てと言ってくれない?」
「だってぇ!」
「別に?君がいいならいつだって捨ててくるんだけど?その辺の女適当に捕まえて、適当にヤッてくるし?」
「だめです・・・・・・いやです・・・・・・」
「はいはい。わかってるよ。そんなことしないから。こんな冗談で泣きそうにならないでよ」
「絶対ですよ?嘘ついたら嫌ですよ?」
「嘘ついてるならとっくに童貞卒業してるし。でも、僕を我慢させる代償として・・・・・・」
「?」

「部屋に戻ったら抱きしめさせてよ・・・・・・」
「・・・・・・ハイ・・・///」





hug your love tightly






22222打オーバー御礼リク、「ヒバピン+ファミリーで甘甘」でした。

やりたいようにやらかしすぎた(笑)

これ甘甘なのか?というツッコミ、雲雀さんのDOUTEI疑惑についての申し立ては無しの方向で。

うちのヒバピンは意外と純で清い関係がデフォなんですww

ファミリーはできるだけいっぱいだそうと盛り込んだ結果、地の文を排除する方向で書いてみました。

会話文ばっかりですがどうでしょう?

リクエストありがとうございました!

2010/10/12





※こちらの背景は Sweety/Honey 様 よりお借りしています。




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