破壊衝動
僕に
この僕に
恋心が有るなんて
死んだって認めない──
何の予告も無く現れて
馴れ馴れしく名を呼ぶ
その男
ディーノ
ざわめきを感じた
あの赤ん坊を前にしたような
戦慄とも
闘争心ともとれる
血肉沸き踊る
言い知れぬ
快感
けれど“それ”は明らかに赤ん坊とは異なる
本当にささいな違和感
見逃してしまうような
本当にささいなこと
でも
僕にはそれがなによりも重要だった
僕を映す
僕への意志を宿す
瞳
思えば
僕を僕として見てくれたのは
後にも先にもこの男だけだったのかもしれない。
赤ん坊も
六道骸も
僕としての僕を
必要としていなかった
彼等が欲しかったのは
ただのかませ犬
僕で無くても
僕と同等の代用品が有れば
彼等は僕を必要とはしなかった
所詮
都合のよい手札
その程度の価値しか
僕には無かったんだろう
だから
貴方が僕を僕として
その目に映してくれるなら
これほど嬉しいことはない
溢れんばかりの狂喜と
振り切れんばかりの衝動が
貴方を膝まづかせようとする
眼下に這いつくばり
僕に平伏すその瞬間を想像するだけで
歓喜に震える
無意識に
笑みすら零れる
抑え切れない
とめどなく溢れ出す
貪欲な支配欲
貴方はもう
僕のものだ
「あなた なかなか強いんだね。気に入ったよ」
トンファーに付着した血をベロリ舐めあげる
久しぶりだ
こんなにも心が沸き立つのは
「そりゃ光栄だね」
相当量の動きをしたにも関わらず、肩で息をすることはもとより呼吸の乱れ一つ感じさせない
すっとわずかに息を吸い込むと再び構えにはいるディーノ
「そろそろそれやめたら?」
拭い切れず血を纏ったままのトンファーで雲雀はディーノの右腕を指し示す
「余計な気遣いは無用だぜ。そっちこそいい加減限界なんじゃないのか」
「余計な気遣いは無用なんでしょ」
半身開く形で返事代わりに構えを取った
「はは。相変わらず気位高いなお前は」
幾度目かもわからない両者譲らぬ攻防が始まる
「僕以外の人に負けないでくれる?」
右手で下から打ち上げ、さらに一歩踏み込んで左手が顔面へ追撃。
わずかに半歩引き体を掠める位置でトンファーをかわすと、ディーノはそこから前に
一歩踏み込み雲雀の懐に入り込む。
近過ぎる間合にトンファーは意味を成さない。
彼の動きには一部の無駄がない。最小にして最大の動き。
「これでもファミリーのボスはってるんだ。そうやすやすと負けられねーな」
「何勘違いしてるの」
仕方なしに雲雀は大きく後ろに跳び退く。
「あなたは僕が噛み殺すんだよ。それより前に誰かに横取りされたんじゃ興ざめだって言ってるの」
「たいした自信だな」
「僕のものを僕が殺すのは当たり前でしょ」
くくっ
笑うディーノ
「何かおかしい?」
「いや、思ってた以上に気に入られてるんだなって」
気に入っている?
誰が?
この僕が?
…まさか…
「冗談も休み休み言うんだね」
「俺は大まじめだけどな」
「あなたのそういう所、嫌いだね」
「本当に、嫌いか?」
含みのある、声。
好き、嫌い
わからない
「俺とやり合うのは楽しいだろ」
わからない
けれど
あなたは
とてもここちよい
この感情に
人はなんと名を付けるのだろう
これも
恋心だというのか
僕を真っ直ぐに見据える瞳に
返す答えが
絶対的な支配欲であったとしても
人はそれを恋と呼ぶのだろうか
そんな想いは
果たして許されるのか
僕と同じ
血の香りを纏う
この人は
僕を受け入れてくれるのだろうか
一瞬
全ての動きが停止した
思わず
魅入ってしまった
あなたの
真っすぐな瞳に
「恭弥?」
攻撃の手が緩まる
この人を手に入れたいと思う
そばに置きたい思う
けれど
異端の僕を
異形のあなたは
許してくれるのだろうか
「っ!?」
下方からえぐり上げるように雲雀のトンファーがディーノの首元に伸びた。
最小限の動きで上下に鞭を張り、寸での所で攻撃を受け止める。
「ねぇ」
首元への打撃を下げると雲雀はゆっくりと口を開く。
それは
己への許しを請う様に
全ての行いを纏うように
「あなたは、あなたを許せる?」
自らへの問いとも取れる
懇願だったのかもしれない
この人の答えで
僕は許される氣がした
しばらく考えるようにしてディーノが応える。
「そんな答えは俺自信がわかってりゃいーんだよ」
それが
それがあなたの答えなら
それは
僕の答えだ
僕は
僕の行いの全てを許す
だからきっと
この想いも許されるはずだ
「僕が勝ったら言うこと聞いてくれる?」
「あぁいいぜ。ただし俺が勝ったら、そんときゃツナに協力してもらうぜ」
あ
あぁ
そういうことなのか
あなたも
僕を見ていたわけではなかったというのか
僕を通してあの子の未来を見ていただけなのか
やはり
この感情は恋等ではない
歪んだ僕にあるのは
純粋にして
完膚なきまでの
破壊欲
暴力的なまでの
支配衝動
あなたの言葉に
込み上げてくる何かがあろうとも
それはただの錯覚に過ぎない
僕に
恋心なんてないのだから
あなたの言葉に傷つくことなど
あるはずないのだ
「お前が勝ったら俺はなにすりゃいーんだ?」
僕に恋心なんてない
「……僕は」
恋心なんて認めない
僕だけを見てくれる瞳でないのなら
そんなもの
壊れてしまえ
壊してしまえ
跡形もなく
微塵も残さず
全てを葬り去ってしまえ
きっと
後悔などしない
あなたに寄せる感情など
もう何もないのだから
誰かのものなんて
欲しくない
僕が欲しいのは
僕だけのものだ
「僕はあなたを殺せればそれでいい」
もし
もしも
あなたを殺して
僕が後悔するようなことがあれば
その時は
あなたを好きだったと
認めてあげるよ
その昔友人に頼まれて書いたヒバディ・・・・・・・げふげふ
ひばりさんとディーノさん(へたれ;)
ホントは「ディーノに恋心を抱くひばりさん!」
と頼まれたのですが・・・・・・・・・・
さかきの想像力では頬を桜色に染めはずかし混じりに
「・・・っ、か・・・かみころすよっ!!(ぽ)」
なんていうひばりさんはとても書けそうになかったので
恋心に気付いたひばりさん。
壊すことしか出来ない自分を受け入れてくれるか不安なひばりさん。
裏返しの行動しか取れないひばりさん。
とゆーコンセプトで書いてみた。
へぼ文でホントすみませ・・・
2006/某日
※こちらの背景は
NEO-HIMEISM/雪姫 様
よりお借りしています。