ゴロリゴロリと転がるGW最終日。

「どこかに遊びに行きましょうよ」
「イヤだ」

たった一言のやりとりで会話が終わる。
何だっけ?
これがいわゆる倦怠期って奴?
ぷぅと膨らませた頬も、見る人がいないなら何の役にも立たない。
仕方ないからのっそりヒバリさんに近づく。

「何してるんですか?」

手元の本に視線を落としたままのヒバリさんに聞く。
読書以外の何物でもないのにわざわざ聞いてしまうのは、それくらい暇だったからだ。

「読書」

想像通りの答えが返る。
つまらない。
つまらない。

「暇です。何かしたいです」
「何かって何?」
「何かって何かですよ」
「何かが何かと聞いているんだ」
「何かを何かと聞かれても何かとしか答えようがありません」
「・・・・・・埒があかないね」
「・・・・・・本当に」

無駄なやりとりだった。
ヒバリさんはなおも視線を本に落としたまま。

「こっち見てください」

袖をつい、と引いてみた。

「邪魔」

すげなく払われる。

「邪魔とは何ですか邪魔とは」
「邪魔のものは邪魔なんだから仕方ないだろう」
「しかし彼女に対する扱いとしては極めて不当です」
「自らを彼女と名乗りたいならそれ相応の態度を示して欲しいものだね」
「私は立派に彼女しています」

そうとも。
私は十分過ぎるくらいに彼女をしているではないか。

「むしろ怠慢しているのはヒバリさんの方ではないですか?」
「僕に意見しようと?」
「亭主関白ですか?時代錯誤も甚だしい」
「三つ指付くのは服従の証。どう扱おうと僕の勝手」
「呆れた物言いですね。そんな思考の人がこの時代に生きているなんて、博物館かどこかで保護された方がいいんじゃないですか?」

鼻で笑ってやった。

「生意気」
「傲慢」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

そして、沈黙。

「・・・・・・ねぇ、楽しい?」
「え?」
「『倦怠期ごっこ』」
「・・・・・・あんまり楽しくないです」
「だろうね」

ヒバリさんは本を閉じて立ち上がる。

「どこか行く?」

今度はヒバリさんが訪ねる。
『ごっこ』遊びではなく、私たちの会話として。
私は一切の迷いもなく即答する。

「ケーキ屋さん!」
「・・・・・・昨日もケーキ食べたじゃないか」
「昨日のはバースデーケーキです。今日はクリームのじゃなくてフルーツたっぷりのタルトが食べたいです」
「わかった」
「わーい!」
「近くの公園でいいよね」
「そんなぁっ!?」

悲鳴を上げた。
すたすた歩き出すヒバリさんの足下にまとわりついてポカポカと叩いて抗議する。

「ケーキ屋さんて私言いました!発音もばっちり綺麗に言えました!なのに何で公園なんですか!」
「イヤなら行かない」
「それもイヤです遊びには行きたいです!でもせめてデパートとかなんかそう言う感じのところがいいです!」
「人が多いからイヤだ」
「ヒバリさんがコミュニティ障害者だとは知っています。 ですが人はヒバリさんが思っているほどヒバリさんのことを注視していません! 怖がる必要はありません大丈夫です私が付いてます!」
「僕は断じてコミュニティ障害じゃないし、人を怖がってもいない」
「でも私知ってます」
「何を」
「ヒバリさんが『ロリコン』と言われて傷ついたことをです!」
「・・・・・・」

ヒバリさんが閉口する。

「大丈夫です私はヒバリさんのことを信じています。 ヒバリさんはたまたま十も年下の私を愛してしまっただけであって、 幼女でなければ興奮を覚えない異常性癖者ではないって信じています!」
「ねぇ、誰が君にそんなことを教え込むの?」
「師匠です!」

私は胸を張って答えた。
師匠が懇切丁寧に教えてくれたことを理解するのは難しかったけれど、なんとか丸暗記する事は出来た。

「・・・・・・行き先変更」
「え!?」

私の説得が効いたのだろうか?
どこに連れていってくれるんだろう。
ケーキ屋さん?
デパート?
それとも洋服屋さん?
わくわくしながらヒバリさんの言葉を待つ。

「風狩り」

今日一番の良い顔で、ヒバリさんはそう言った。
私たちのGWは、血生臭く終わりそうです。







暇人とロリコン







甘いヒバピンを書こうとして、どうしてこうなるのか・・・・・・

誰か解明して下さい。

本気で私の思考回路ダメだわ。

大人ヒバリと仔ピンだったら甘くなるって踏んだけど、

ぜんぜん甘くないわ。

むしろ苦いわ。

2012/05/06





※こちらの背景は Sweety/Honey 様 よりお借りしています。




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