誕生日の翌日にある、この不可思議な喪失感は何だろう。
たくさんの祝福をされて、たくさんの贈り物をされて、これ以上ないと言うくらいに満たされていたはずなのに。
何もかもが集中し、飽和しすぎたための一時の虚構と解っていてもなお、私は寂しいと感じてしまう。
「・・・・・・はぁ・・・・・・」
ベッドに腰掛け、テーブルの上に陣取っているプレゼントを眺めては溜め息をついた。
嬉しい。
嬉しくない。
楽しい。
楽しくない。
どっちも本当。
「私はきっと贅沢者なんだ・・・・・・」
一つを知ったから、もっと欲しくなる。
何も知らなかった時よりも貪欲になる。
体を支えていた筋肉の力を抜く。
重力に従って体はベッドに深く深く沈み込んだ。
「何してるの?」
静かに問う声。
視線だけをそちらに向けた。
窓際の椅子に腰掛けたその人は、わずかに首を傾げていた。
「・・・・・・何でもないです・・・・・・」
「なら溜め息つくのやめなよ。辛気くさい」
「私の勝手です」
ここは私の部屋だ。
部屋の中で位私の自由で良いはずだ。
「拗ねてるわけ?」
「・・・・・・何に、ですか?」
「僕が昨日パーティーに行かなかったから」
「別に。ヒバリさん、自意識過剰です」
「あ、っそ。そう言うと思っていたけど」
「ヒバリさんがいなくても、皆さんがお祝いしてくれましたもん。パーティーしてくれて、美味しいもの作ってくれて、プレゼントだってたくさん貰って・・・・・・ヒバリさんがいなくても全然寂しくも悲しくもなかった。まぁ、居てくれたらそれはそれで楽しかったとは思いますけど、ヒバリさんはああいう場は嫌いだろうから期待していませんでした」
あけすけなく、本心を述べる。
強がりなんかじゃなく、本当に寂しくなかった。
それどころか思い出しもしなかったくらいだ。
「そこまで期待されていないと逆に清々しいね」
「でしょう?」
だって、私は貴方がどういう人かということをちゃんと理解している。
だから過剰な期待も、過小な期待もしない。
きちんと過不足無い期待をしている。
それは、きっと貴方も同じで。
貴方は私が何を欲しいか解っている。
いつそれを欲するかも、きちんと解ってる。
だから、貴方は今ここにいるのでしょう?
「だから寂しくなんかなかった」
「うん」
「でも、今は寂しいです」
「うん」
「ヒバリさんに側にいて欲しいです」
「うん」
「抱きしめてください」
「いいよ」
ゆるゆると腰を浮かせ、私が体を横たえるベッドへ歩み寄る。
手を伸ばせば、体が引き起こされて優しく抱き止めれくれた。
「・・・・・・やっぱり、ヒバリさんがいいです」
「そう」
「私が本当に欲しいものを解ってくれているのはヒバリさんだもの」
「君が解りやすいんだよ」
「そんなこと無いです」
解ってくれたのは、貴方だけだもの。
「・・・・・・あったかい・・・・・・」
背中に回した手から伝わった温かさは本物で。
抱き寄せてくれる手の感触は本物で。
そこに私が欲しいモノが、確かにあって。
ただ、そうするのが当たり前のように。
私の隣に居座っていた空虚の居場所を、貴方は奪い続けてくれた。
空虚を埋める、貴方
ってなわけで一日遅れでピンの誕生日を祝うような気配を見せてみた。
しかし当サイトの甘くないヒバピンがそう簡単に甘くなりはしないのだよ。
あまあまいちゃいちゃを望んでいた人さーせん。
ま、イーピンおたおめ話なのでイーピンが満足していれば許されると信じてる。
2010/11/26
※こちらの背景は
clef/ななかまど 様
よりお借りしています。