嘘と幸福の駆け引き -骸side-






「というわけでボンゴレ。『大好き』って言ってください!」

不気味としか言いようのないほど笑顔を浮かべて。
早くといわんばかりに身を乗り出している。

いまさら六道骸が俺の部屋に勝手に入ってることには何も言わない事にする。
下手なことを言うと後で何をされるか分からないからね。
触らぬ神にたたり無し。

・・・まぁ、骸の場合は触らなくってもいろいろ厄介なんだけど・・・。

とりあえず俺は面倒に巻き込まれたくないので従うことにする。

「・・・大好き・・・」

とたんに骸は表情を曇らせる。

「なんですかそれは!?そんな『大好き』に何の意味があるというのですか!」
「いや・・・そんなこと言われても・・・・」
「頬を赤らめつつ恥ずかしげに言ってこそのものでしょう!」
「・・・そんな気がしてたから言わないんだよ・・・」

そりゃ分かるよ。
今日に限って骸が来ないなんてさ。
バレンタインもホワイトデーも容赦なく取り立てに来たコイツのことだ。
まさかこんなお楽しみイベントを逃すとは考えられない。
この六道骸という人物の性格を考えれば何をしそうか、検討くらいはつく。

「やり直してください」
「え?」

自分から勝手に要求してきてなんて身勝手な。

「何で俺がこんなことを・・・」
「何か言いましたか?」
「・・・いえ。・・・でもなんでまた・・・」
「雲雀恭弥に言ったそうじゃないですか」
「なっ!・・・・なんでそれを・・・」

追求するのはとうの昔に止めたのだが。
どういうわけか俺の動向は骸に筒抜けなのだ。
どこかに盗聴器でも仕掛けられているのではと探したことまで知られていたとき、
俺は骸を相手にすること事自体が間違いであったと気付いた。
しかしこうもプライベートなことを指摘されるのは正直・・・・。
俺の人権はどこに行ってしまったのだろう・・・。

「雲雀恭弥だけおいしい思いをするなんて許せません!
  さぁ僕にもあの極上スマイルで『大好き』って言ってください!!
   その後にキスでもしてくれたらなおポイント高いですよ」

「何のポイントだよ。大体・・・」

「あーなんか無性に世界大戦とか起こしたくなってきましたねぇ
  ちょっとぷちっと始めてみますかね。まずは・・・」

「わ!分かったから!!ちゃんとやってやるから!だからそーゆー脅し止めろよ!」

「さっすがボンゴレ。話が分かる人でよかった。
  ではさくっと、部屋に入ってくる所からやりましょうか」

今俺は世界を救ったのだと、胸を張ってここに宣言する。
俺の犠牲を知らない世界の人。
どうか幸せにそのまま生きてください。

自分の部屋に入るためにどうしてこんなにも苦労しなければいけないのか。
そんなことを考える頭が俺の中にもう存在しない事実は考えないことにする。
考えれば考えるだけむなしくなるのは俺なのだ。

廊下に出、後ろ手にドアを閉めると大きくため息を漏らした。
どうやってこの状況を回避したらよいのか・・・。
骸の言うとおりにして図に乗らせるのも悔しいし。
かといってあいつを出し抜くなんてこと・・・。
・・・・そうだ・・・・。

「ボンゴレvいつ入ってきてもいいですよvv」

扉越しに骸の声が聞こえる。
これなら骸も少しはおとなしくなるかもしれない。
よし!やってみるしかない。
ドアノブを回し、静かに押し開ける。

「骸?」

「何ですか!愛の告白ですか!」




「骸。大嫌いv」




「・・・・・ボンゴレ・・・?」

「なんですか?」

「それ嘘・・・ですよね?」

「どうかな?今日はエイプリールフールだから」

「まさか本気・・・ですか?」

「さぁ?今日はエイプリールフールだから」

「その嘘に、僕は引っ掛かりませんよ!」

「どっちでも。今日はうそつきの日だから」

満面の笑みで俺は骸に返してやった。

「どんな言葉だって今日は意味がないんだよ。
  どれがホントでどれが嘘か、見分けることなんてできないんだから」

むくれてぶつくさと言い出した。

「しかし、雲雀恭弥だけずるいのはいかんともしがたいですよ」

「じゃぁ・・・」

そういって俺は真正面から骸の背中に腕を回した。
ちょっとだけ背伸びして骸の右肩に顎を乗せる。
ぎゅと、抱き寄せる。

「ボ・・・!ボンゴレ!?」

「これでおあいこって事で。だめ?」

回した掌からドクドクとすごい速さで心臓が脈打ってるのが感じられる。

「ボ・・・ボンゴレがそこまで言うのなら・・・」

「ありがと」

「きょ、今日のところはこの辺でおいとまさせてもらいますよ」

ばたばたと。
振り払うように骸は部屋を飛び出していった。

「おいダメツナ。お前どこまで本気でやってたんだ?」

どこからともなく声が聞こえる。
この人を小馬鹿にしたような声の主は・・・

「何だよ。リボーン見てたのかよ?」

「まぁな。で?どうなんだ?」

「どうもこうも、今日はうそつきの日だから」

「全部嘘ってことか」

「さぁね。一番面倒くさくない方法を取っただけかも」

もしかしたらこれで骸の盗聴も減るかも知れないし。
プライド一つでプライバシーが守られるなら安いもんだ。

そんなことを思う、春の一日。









というわけで。

エイプリル三部作終了。

ホントは骸視点で書きたかったのですが

書けば書くほど骸の言動が変態化するため自主規制しました。

なので今回もツナ視点。

前半は『嘘の中にも真実あり』と基本の流れを統一してみました。



そんな感じで雲雀さんとは扱いを変えて見ました。

雲雀さんは言葉で。

骸は態度で。

嘘かホントかは分からないけど(笑)

二通りの告白の方法。

どっちがお好みでしょう?

2008/04/03





※こちらの背景は NEO-HIMEISM/雪姫 様




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