〜本番開始〜






異常なまでの盛り上がりを見せるリボーンの誕生日会。
飲めや(とはいってもジュースだが)歌えやの大宴会。
誰かが一発芸をすれば、どこかで負けじと芸を披露する。
歌い出せば大合唱、笑い出せば馬鹿笑い、あっという間に楽しい時間は過ぎていく。

ボーンボーンボーン

店の掛け時計が低く、夜が更けたことを知らせる。

「・・・・もうこんな時間か」
「12時過ぎなんて大分遅くなっちゃったね。そろそろ終わりにしよっか?」

一同が見上げた時計は深夜0時を示している。
成人していればそれほど憚られる時間でもないだろうが、彼等はまだ中学生。
こんな夜遅くまで騒ぎ倒しては親も心配するだろう。

「そーだな」
「あ、でも最後にもう一つだけやっておきたい事があるの。ツナ君、いい?」
「?いいけど・・・・何するの?」

最後にと、断りを入れた京子が全員に目配せをするのをツナは不思議そうに眺めた。
これだけ騒いでまだやっていないことが残っていることに驚いてしまう。
ツナが全然別のところに注視している間に、京子からの合図を受け一同が小さく頷き了解の返事を返した。

「せーの」

『ツナ君、お誕生日おめでとう!!』


「・・・・・え・・・・・?」

一体何が起こったのか。
事態を理解するまでに時間を要した。
リボーンの誕生日会をやっていたはずで。
それなのに。
今、おめでとうって・・・・。

「昨日はリボーン君のお誕生日、日付が変わった今日はツナ君の
 お誕生日でしょ。だから二人を驚かせようって皆で企画したんだよ」
「・・・・・そっか、今日俺の誕生日だ・・・・」

すっかり忘れてた。
去年は皆が内緒で準備しているのは俺の誕生日を祝ってくれるのかと思って、でもそれは結局リボーンの誕生日で。
あんなに落胆したのに。
それなのに。
自分の誕生日すら忘れるくらい今年はリボーンの為に奔走して。
こうして。
皆が俺のことを祝ってくれてる。

「・・・・っ・・・・!」
「ツナ君?・・・・こういうの嫌だった・・・?」
「・・・ちが・・・・そうじゃなくて・・・・」

ただただ。
嬉しくて。
いつも一人だった俺を。
こんなにたくさんの人が祝ってくれて。
こんなにたくさんの仲間が出来て。
胸の中がすごくすごく熱くなって。
胸を喉を熱い何かがこみ上げる。
俺はこんな感情を知らなかった。

目頭が熱くなるのを押えられない。
涙腺から勝手に涙があふれ出る。

「嬉しいんだ」

おかしいね。
こんなに嬉しいのに涙が出るなんて。

「皆、ありがとう!」
「えへへ。ツナ君が喜んでくれてよかった」

笑う。
ツナが笑って。
京子が笑って。
皆が笑った。

「あのね。これ、ツナ君にプレゼントなの」

ランチボックスほどの大きさの紙箱を手渡される。

「うわぁ何だろ」
「実はね、昨日あれからもう一度一人でケーキを作ってみたの」
「あれから?」
「うん。ツナ君に食べて欲しくて」

でもちょっと失敗しちゃって。
しゅんとした顔で京子がうつむく。
俺は構わずに箱を開けた。
中にあるのは二人で作ったケーキの4分の1ほどの小さなホールケーキ。
その真ん中には俺の顔を真似したと思われるクッキー。
どうやら京子が失敗と思っているのはこのクッキーのようだ。
焼いたときのふくらみを考えずに成形したようで、焼く前はにこにこの笑顔だったと思われるそれはたれ目の情けない表情を浮かべている。
京子は落ち込んでいるようだが、ツナ自身はどうにも自分というものを的確に捉えていると感心すらしてしまう。

「今食べてみてもいいかな?」

返事も待たずに俺は一画をフォークで切り取り口に放り入れる。
二人で作ったものより生地がふわふわで舌触りがいい。
生クリームの柔らかさも甘さも申し分ない。

「これ、すっごい美味しいよ!ありがとう!!」
「・・・・うんっ!」

不味いはずがなかった。
だってこれは京子ちゃんが俺のためだけに作ってくれた世界でただ一つの・・・・・




「君たちこんな時間まで何してるの」


予想外の来客が舞い込んだ。

「ひ、ひ、ひ・・・・雲雀さん・・・・・どうしてこんなところに・・・・」
「並盛で起こるすべてを把握してる。
 もちろん君たちがここで群れていることも知っていた。
 僕の目の届くところで群れるなんていい度胸だね」

咬み殺してあげようか?
どこからともなく取り出した仕込みトンファーがギラリ光を反射する。
はたから見たら完全な悪役である。

「できれば・・・・丁重にお断りしたいなぁ・・・・
 なんて思っちゃったりなんかしっちゃったりして・・・・・」

思わず尻込みして後ずさり。

「今まさに解散しようかなって話をしていたところなんですよ。ねぇ皆?」
「え、あぁ!そうそう!!」
「そうだぜ。帰ろうと一歩足を踏み出したところだったんだ」
「もうこんな時間ですから、ねぇ?」
「・・・・・ふん・・・・」

ヒバリは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
狩り甲斐のない獲物に興味を失っているらしい。

「なら僕の気が変わらないうちに帰るんだね」
「もちろんそうさせていただきます!」

ヒバリの恐ろしさを重々承知している面々がそうでない奴等を急き立てて片付けもそこそこにばらばらと解散していく。ちょっと突然の終了で物悲しさもあるけれどこればかりは仕方ない。
それでなくても充分過ぎるくらい楽しい時間をすごせたんだ。
これ以上わがままを言ったら罰が当たってしまう。
一人、また一人と扉をくぐり、残ったのはとうとう俺だけ(リボーンもいるにはいるが雲雀さん相手に役に立ってくれるとは思わない)。

「・・・・じゃぁ、俺も帰ります」
「ちょっと待ちなよ。綱吉」
「?」
「君、今日誕生日なんだろう?」
「雲雀さんなんでそれを・・・・」
「並盛で起こるすべての事を把握しているって言っただろう」
「ま、俺が情報をリークしてやったんだけどな」
「赤ん坊、うるさいよ」

愛用の学ランのポケットから取り出したものを目の前に突き出して

「あげる」
「・・・・え?」
「あげる」
「・・・・いや・・・・その・・・」
「何、僕のあげるものが受け取れないって言うの?」
「そんなこと!ありがとう・・・・ございます」

微妙な感謝の言葉を述べる。
どうしろというのだ。こんなもの。
使い時がまったくわからない。
若干どころか大分もてあます代物をしげしげと見つめる。
なんとも反応に困る代物を押し付けられ途方に暮れる。

「いつまで突っ立ってる気?咬みころ・・・・」
「すみませーーーん!!おやすみなさーい」

言い終わるのも待たずに脱兎のごとく逃げ出した。

「・・・・・・・・・happy birthday 綱吉・・・・・・」




山本家からの帰り道。

「っはぁ・・・・なんでいきなり雲雀さんが現れるんだよぉ。おかげで皆に俺言いそびれたよ・・・・」
「そりゃーあれだろ。ヒバリも祝いたかったんじゃねーのか?」
「あの、雲雀さんが?」
「それも貰ったんだろ」
「こんなん貰ってどうしろって言うんだよ。使い道がないよ」
「魔よけくらいにはなると思うぞ」
「魔よけねぇ・・・・」

「クフフフフ・・・・奇遇ですねぇボンゴレ」

呆然と。
進行方向に現れたパイナッ・・・・・

「六道骸です!」

・・・・読唇術を習得した骸がいた。

「変なの寄せ付けてるぞ・・・」
「俺が知るか」
「なにやら聴くところに寄れば今日は君の誕生日というではないですか」

聞こえていないのか、聞いていないのか、骸は独自ワールドを展開していく。
正直俺たちは骸の話など露ほども聴いていなかった。

「別に君がここを通りかかるのを待ち伏せしていたわけではありませんよ。
山本武宅からボンゴレの家に帰る127のルートを割り出しその中から確率の高い4ルートに
山を張ってクローム、犬、千種を狩り出して張り込みなんてしていませんからね。
思い上がるのも大概にしなさい。僕は君のそういううぬぼれたところが嫌いなんです。
 あ、あぁそうそう

 (中略)

 というわけでたまたま持ち合わせていた僕のこのブロマイド写真を
 どーしてもどーしても欲しいというのならあげても良いですよ」
「いらん」
「っな!?この世界の宝とすらあがめられる美しさを持つ僕のブロマイドを
要らないというのですか!?・・・・・あぁ、別に遠慮することはないんですよ」
「んな気色悪いもんいるかーーっっ!!」

見事なまでのコークスクリューパンチが決まった。



「愛されてんな、ツナ?」
「・・・・嬉しくない・・・・・」



翌日
ツナの机の上には真空パックにした京子の手作り似顔絵クッキーと
並盛風紀委員の腕章と
ブロマイドが一枚置かれていたらしい。









というわけで。

おめでとー!!どんどんぱふぱふ!

途中から自分でも良くわからないノリになってきてしまったけど

書きたいことは詰め込めたかな?



本当は1827とか、6927でも書きたかったのだけれど

すべてを書ききる余力がなかった・・・・orz

仕方ないので最後にちょこっとだけ乱入させておいた。

てかブロマイドって・・・・・時代錯誤も甚だしい。

でも個人的にツナ京チックに書けてそれなりに満足してます。



Diaryにて3日間読んでくださった方

お付き合いありがとうございました。





※こちらの背景は 空に咲く花/なつる 様 よりお借りしています。




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