ぼふん!
と。
記してしまえばいささか間抜けな効果音と共に姿を現した、一人の少女。
バイトの最中だったのだろうか?
白い割烹着に身を包み、中身がまだ入っているであろう岡持を両手で抱えながらキョロキョロ辺りを見回してる。
「・・・・・・あれ〜?ここドコ何かな?」
何度も繰り返された事象なのに、未だ何が起こったのかを把握できていないらしい。
もっとも、僕は時間移動などしたことがないからその感覚はわからないのだけれど。
以外と衝撃も何もなく、瞬きしたら視界だけが変わっているとか、その程度の変化しか感じないのかもしれない。
だとしたら、彼女が度重なる時空移動に気づけなくても仕方がないと言うものだ。
だが。
だからといって、それをそのまま容認するほど出来た人間ではない。
要するに、自分を認識しないことが面白くないのだ。
「あ、れ?ヒバリさん・・・・・・が、学ラン着てる・・・・・・」
ってことはここは10年前の世界?
などとお気楽に首を傾げている様子が癇に障った。
「ね?君。ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」
今更なことを口走る。
言いたいのは、そういうことじゃない。
「や!すみません・・・・・・すぐ出ていきますから」
機嫌が悪いことを察したのか、特に反論することもなく彼女は腰を上げた。
何度か見回した室内から、ここが並盛中学の応接室だとわかったらしい。
慣れた様子で彼女は淀み無く扉の方に足を向けた。
「出ていけとは言ってないよ」
「でも、私は部外者なんでしょう?」
肩越しに振り返った彼女は、ちょっとだけ寂しそうに「部外者」と自分を称した。
本当は違うのに。
部外者なんかじゃ、無いのに。
そんな言葉をはらませた、笑み。
「なら、部外者じゃなくなればいい話だ」
「へ?」
後ろから、抱きすくめる。
「ちょ!?ヒバリさん!?」と彼女が困惑の声を上げたが、そんなものは軽く無視する。
眼下に晒された首筋に某かが付けた鬱血痕を見つけた。
それが何を意味するのかわからないほど、ガキじゃない。
「これ、『僕』が付けたの?」
「あっ!」
「コレ」が意味するものに心当たりがあったのだろう。
さっ、と手でその部分を覆い隠した。
隠したところで無かったことにはならないのに、なんて無駄な行為。
「ねぇ、どうなの?」
「あの・・・・・・その・・・・・・」
真っ赤に染まった顔が、一呼吸置いてからゆっくりと縦に振られた。
「気に食わないね」
「って、結局ヒバリさんがしたことなんですけど・・・・・・」
「関係ないよ」
そうだ、関係ない。
今の僕にとって、未来の『僕』のことなんて関係ない。
「君は、僕のものだ」
今も、未来も。
全部ひっくるめて、僕のものだ。
例え『僕』にだって一欠片たりとも譲る気はない。
「っ!?」
白い首筋に残る醜い痕を塗り変えるように、僕は彼女の首筋に歯を立てた。
キス
独占欲バリバリの中坊ヒバリ。
未来の自分すらも敵対視してるくらいが青臭くていいと思う。
イーピンは未来に帰ってからも10年後ヒバリと似たようなやりとりをする羽目になるんだろうね。
頑張れイーピン!
2011/08/24
お題はヒバピンお題配布サイトよりお借りしています。
※こちらの背景は
RAINBOW/椿 春吉 様
よりお借りしています。