思わず口元が緩んでしまうのを抑えられない。
「ぇへへへぇ〜」
「・・・・・・何なの?さっきから」
「秘密で〜す」
「あ、そ」
明らかに興味なさそうに問い、あっさり引き下がる。
ヒバリさんはさっさと視線を手元の新聞に戻してしまった。
「秘密」と言ったのは確かに自分なのだけれども、無反応過ぎてちょっとつまらないな、とも思う。
仕方ないから私も同じように、手にした物を眺めた。
「えへへぇ〜」
やっぱり口元が緩み、へにゃん、と笑ってしまう。
「・・・・・・その笑い、鬱陶しいんだけど」
「だってぇ〜」
人間、どうやっても笑ってしまう時というのはあるのだ。
殊かわいい物を見たときは無条件で緩んでしまう。
それでも抑えられない分は部屋をゴロゴロ転がってみたり、足をパタパタさせたりで発散させるのだ。
「何見てるの?・・・・・・写真?」
いい加減気になったのか、重い重い腰を上げた。
問い続けても埒があかないと踏んだのだろう。
ヒバリさんが私の背後に回る。
「・・・・・・っ!?コレ・・・・・・っ!!」
「えへぇ〜かわいいでしょ〜?」
珍しくヒバリさんに動揺が走る。
・・・・・・はぁ、と大きなため息を吐いた後。
「・・・・・・それ、どこで?」
「この前押入の整理をしてた時に見つけたんです〜。他にもいろいろ可愛いの写ってましたよ〜」
「返して」
「やですよ〜。えへっ、なんかヒバリさんにもこんな時代があったなんてちょっと新鮮」
ひらり身をかわし、手の中のソレが奪い取られないようにしっかりと距離を開ける。
「ほっぺたぷにぷに〜ってかんじでホントかわい〜!」
「うるさいよ・・・・・・」
私が手にしたそれに写っているのは、幼き日のヒバリさんだ。
首が座りだした頃だろうか?
小さなウサギの人形の耳をパクリとくわえたまま小首を傾げてカメラを見上げる仕草がいやに可愛い。
きっとお気に入りだったのだろう、ウサギの人形はくたくたになっている。
「これ好きだったんですか?あ、もしかして今もコレがないと眠れないとか?」
「そんなことあるわけないでしょ」
「いやいや〜こういうのって意外と大きくなってからも必須アイテムだったりするじゃないですか。実はどこかに取って置いているタイプだったりして!」
「いい加減にしないと・・・・・・」
「しないと?」
ゆっくりとした動作でこちらに近づき。
余りにゆっくりだったから私は逆に動けなくて。
かぷり。
耳に歯を立てられた。
「この子の代わりになってもらうよ?」
ヒバリさんは写真の中と同じように、小首を傾げながら私の顔を覗き込んだ。
噛み殺す
この御題シリーズの中では珍しい感じ?
たまにはこんな感じもいいでしょ。
そういうことにしておく。
2011/07/24
お題はヒバピンお題配布サイトよりお借りしています。
※こちらの背景は
RAINBOW/椿 春吉 様
よりお借りしています。