「たまに思うんです」

唐突に切り出した私に、ヒバリさんは怪訝な表情を浮かべた。
ろくでもないことを口走ると思われているのだろう。
事実、その通りなのだけれど。

「きっと、ヒバリさんが師匠に似ていなかったら私はヒバリさんを好きになったりしなかったって」
「へぇ」

感嘆にも似た相槌。

「それって、僕のこと顔だけしか見ていないっていうこと?」

私は肯定にも否定にも取れる曖昧な笑みを浮かべることでその場を濁した。
自分でもよくわかっていないのだ。
答えられるわけがない。

師匠に似ていたから、好きになった。
これは紛れもない事実。
でも、今も師匠と重ねているのかと問われれば答えはノー。
師匠と切り離して、一個人として認識している。
ぶっちゃけてしまえば容姿以外は一つも似ていないとすら思っている。

それでも、好きになった。
寂しさを紛らわせる代替としてではなく、一人の男性として好きになった。

それはつまり。


「運命、だったのかなって」


たまに、思わずにはいられない。

「君がそんな馬鹿げたことを言うなんてね」
「馬鹿げていますか?」
「馬鹿げているよ。運命なんて無い。ただの確率論じゃないか」
「師匠とヒバリさんが似てることも、私がターゲットを間違えて並盛町に来たことも、私と貴方が出会ったことも、 私が貴方を好きになったことも、貴方が私を好きになったことも、ただの、確率論ですか?」

何か一つが抜けていれば成立しなかったこの関係が、本当にただの確率?

「・・・・・・君は現実主義者じゃ無かったのかい?」
「そうですよ」

私は、虚構など信じない。
目の前で起こった事実のみを正確に捉え、正確に反応する。
殺し屋として培った生き様。

「現実主義者が『運命』だなんて口にしたらおかしいですかね?」
「おかしくはないけれど、異質ではあるね」

特別感情も込めず、ヒバリさんは淡々と答えた。
私が言わんとすることを、早々に察したのかもしれない。

「私だってオンナノコですから、たまには夢見がちなことも言いたくなるんです」
「似合わないね」

突っ慳貪に一蹴してヒバリさんはさっさと歩きだしてしまった。

「君には硝煙と血だまりの方が似合っていると思うよ」
「・・・・・・それ、オンナノコに向ける言葉じゃ無いと思います・・・・・・」
「君はただのオンナノコじゃないんだから仕方ないでしょ」
「ぶぅ〜」

それは、そうかもしれないけど。
ちょっとつれなさすぎるわ。

「いつまでぶーたれてんの?『運命の子』が誰かに買われても知らないよ」

え?と顔を上げた時には。
カラン、と古めかしい音を立ててる扉の向こうに姿を消そうとしているところだった。

「あっ!ヒバリさん!?待ってくださいよ!!私、黄色いのがいいです!ヒバードみたいな色したあの子!あの子がいいです!!!」

慌てて私も後を追う。
運命の出会いを果たしたぬいぐるみを掻き抱くため、一目散におもちゃ屋の戸をくぐった。




ひとめぼれ




素直に買ってとは言えない(言わない)のがイーピンぽいかな、と。

普段は言わないようなこと言って暗におねだりするのがうちのイーピン。

そんな甘えにホイホイ乗ってしまうのがうちのヒバリというわけです。

もっと素直にいちゃいちゃしたらいいのにね。

それにしても御題の捉え方のひねくれっぷりがひどいと自分でセルフつっこみ!

2011/07/19


お題はヒバピンお題配布サイトよりお借りしています。





※こちらの背景は RAINBOW/椿 春吉 様 よりお借りしています。




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