「ぱぱっ!」
突進する勢いで、小さな体がソファーに座る俺にタックルを仕掛け───もとい、抱きついてきた。
普段は被らない、不可思議な形の帽子を頭に乗せている。
「どうした?」
頭をくしゃり撫でてやれば、ぷぅと頬を膨らませた。
どうやらせっかく整えた帽子の位置をずらされたことがお気に召さなかったらしい。
抱きついた体を離し、小さな手で頭上の帽子を整え───ているのだろうが、実際はより崩しているだけだったりする───これ見よがしに咳払いを一つ。
「とりっくおあとりーと!」
舌っ足らずな言葉使いで、横文字を喋る姿は何とも微笑ましい。
トリックオアトリート・・・・・・・・・Trick or Treatのことか。
「それについては去年も説明したと思うが・・・・・・」
日本に伝わっているハロウィンという風習がどれだけ形骸化したものであり、そこに含まれる真の意味については昨年滔々と教えたはずなのだが・・・・・・。
幼い子供の記憶には全く残らなかったということなのだろう。
でなければこうして仮装などしているはずもない。
無駄になってしまうかもしれないが、俺は再び一年前と同じ説明を繰り返そうと口を開こうとした。
その時。
「タタルさん」
顔を上げれば、奈々くんが唇に指を当てて「シー」と言っている。
黙って相手をしてあげて、というサインだ。
「パパ?」
再び視線を戻せば、くりくりとした瞳が俺を見上げていた。
確かに、この年齢であれこれを理解しろという方が無茶な話だ。
純粋に、何の意図も含みもなく、ただただイベントとして楽しむ時期があってもいいはずだ。
知ることは、これから先でも遅くはない。
「悪いが、今お菓子は持ってないよ」
小さな体を抱き上げ、膝の上に乗せた。
「じゃあいたずらね!」
ニヤリ。
悪巧みをするときの笑みを浮かべた。
「えいっ!」
チュ。
「っ!?」
頬に押しつけられた唇。
「へへ〜っ!ちゅーこうげき!」
「・・・・・・これは、やられたな」
「これにこりたららいねんからはちゃんとおかしよういしてね!」
「さて、どうしようかな?」
「えー?おかしくれないのー?」
「ママからもらっただろ?」
「もらったけど、パパからもほしーもん!」
「ふふふ」
やりとりを見ていた奈々くんも拳を口元に当て、この微笑ましいやりとりを見ている。
こんな日があっても悪くはない。
そう、思った。
とりっく おあ とりーと
タタナナの2世が見たいです。
子煩悩なタタルさんとか見たいです。
子供の前では薀蓄語らないタタルさんとかありじゃないですか?
とりあえず私はタタナナ2世が見たいので皆さんのタタナナ2世話を待ってます。
かいてくれなきゃいたずらしちゃうぞ!
2011/10/31
※こちらの背景は
ミントblue/あおい 様
よりお借りしています。