崩壊しないものなど、この世に何もない。
堅牢な建造物でも、
強固な意志でも、
唯一絶対の思想でも、
天地に等しいほどの宗教でも。
それらは時とともに変遷して、やがて脆く崩れ去っていく運命にある。
いや――――、
造られた時から既に崩壊は始まっているのだ。

だから、壊れるのを嫌うならば、造らないことしか方法はない。

それでも人間は連綿と何かを創造してきた。
                 (高田崇史 著/QED 東照宮の怨 より抜粋)



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つまりこれはそういうことなんだ。
こんなにも単純なことならばもっと早くに気付いても良かったのに。
たったこれだけのことを理解するのに俺は一体どれだけの時を要したんだろう。


「つまるところ、俺は欠陥製品なんだ」
「は?」
「輪廻から外れた俺は、人として完成してない」
「大王?」
「・・・・いや、逆かな?人になりきれなかったから、輪廻から外されたのかな」
「さっきから何を・・・・」
「だから俺は、ただ一人世界に取り残され、朽ちることなくココで世界の終わりが訪れても居座り続けるしかないんだ」
「・・・・・・・・・・」

「ごめんね?鬼男君」
「何が?」
「君を“創造って”しまって」
「貴方が謝ることじゃありません」
「君を完全に創ってしまったゆえに、君の命には終わりがある」
「・・・・・・そうですね」
「皮肉な話だよね。欠陥製品が生み出したものが完全、だなんて」
「・・・・・・・・・」
「俺を、恨むかい?」
「―――まさか」


「僕は貴方に恨まれこそすれ、恨む道理なんてないです」


限りある命を望んだのは貴方だったのに。
手に入れたのは“僕たち”だった。
貴方はどれだけ僕等を恨めしく思ったことだろう。


―――それを望んだのは俺なのに、何故お前が・・・・・・
                  望みもしないお前が手にするんだ―――


生まれる前に頭の中に反響した叫び。
あの悲痛な声は

(大王・・・・貴方だったんですね)

血の池でたゆたう幼き僕の首に伸ばされた手も
恐ろしい形相で睨む鋭い目も
悲しく歪んだ口も
全て記憶の中にある。


「―――恨んでいない・・・・と言ったら嘘になるね」
「そうでしょうね。なんせ、あの表情でしたからね」
「覚えてるの?生まれる前のことなのに」
「おぼろげですけど」
「そうなんだ・・・・・。そりゃ悪いことしたね。
確かに憎憎しいと思ったことは事実なんだ。どうして俺じゃないんだ!ってね」

けど

「たまらなく愛しいと思ったのも本当だよ」
「・・・・・・・知っていますよ」

激しい憎悪をぶつけられながら引き上げられた。

そして
生まれて初めて感じたのは、胸にかき抱かれた貴方の温かさ。
生まれて初めて目に飛び込んだのは、泣きそうな笑顔の貴方。
生まれて初めて聴いたのは、「よかったね」という貴方の声。

「・・・・生まれたときからそんなこと知っています」

貴方が優しいことも
貴方が悲しんでいることも
みんなみんな知っている。

だって僕たちは貴方から生まれたのだから。

「貴方の創った命の終わりまで、僕は貴方の側にいます。

僕がだめなら二代目が、三代目が、ずっと側にいます。

そしていつか、貴方が欠陥なんかではなかったと見届けます」






Together with you





カエルの子はカエルだから

カエルの親はカエルなんです

貴方一人が欠陥だなんて、そんなの僕は認めない。









閻魔は輪廻から外れた不死者なんじゃなくて

ただ他の人よりも寿命が長いだけだったらいいな。

2009/06/23





※こちらの背景は NEO-HIMEISM/雪姫 様
よりお借りしています。




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