目が覚めたときの、言い知れぬ不安感。
何がどう、とは表現できない。
ただ漠然と『何かが違う』と心が叫ぶ。

いつかの香港の時もそうだった。
逢えないことが、酷く苦しかった。
君の幻に悩まされるくらい、酷く哀しかった。

だが今はあの時とは違う。
決定的に、違う。

君は東京に、あの家にはもう居ないのだ。
それどころか、日本にすら居ないのだろう。
どこに居るのかわからない。
香港の時のように全てをかなぐり捨てても、君のところには帰れない。


熟睡も出来ないまま、目を開く。
眼前にあるのは、見慣れないベッドの安っぽい骨組み。
東京の、君のすぐ傍で生活できていた頃のものではない。
そのたび思い知らされる。
やっぱり彼女は居ないのだと。
悪い夢であって欲しかったと。

―――でも、これが現実なのだと。


ベッドの下から這い出す。
周囲に対する警戒もおろそかに、ベッドに腰掛ける。
安い、スプリングもほとんど利いていないようなマットがギシリと悲鳴を上げた。

「・・・・・・・千鳥・・・・・・・」

呻く様に、言葉が漏れる。

「・・・・・・・千鳥・・・・・・・」

両手で、目元を覆う。

「・・・・・・・千鳥・・・・・・・」

絞り出されたものは、嗚咽にも聞こえた。

「・・・・・・・・っ、ちどり・・・・・・」


 『どーしたの?ソースケ』


何度唱えても答えてくれる彼女は、居ない。
やさしく笑いかけてくれる彼女は、居ない。
俺を信じていると言った彼女は、居ない。

居ない。

いない。

イナイ。



「千鳥」

逢いたい。

「千鳥」

逢いたいんだ。

「千鳥」

君と東京に帰りたい。

「千鳥」

ただ、君の傍に居たい・・・・・。




君が居ない朝







時系列はOMFの冒頭辺りかな?

あの辺はホント読んでて痛々しかった・・・・・。

まぁ、ぶっちゃけ宗介の心情というよりも、今現在SBM上巻が手に入らない自分の心情。

早く・・・・・・早く読みたい・・・・・・・うぐぐぐ。

2010/07/19





※こちらの背景は NEO-HIMEISM/雪姫 様 よりお借りしています。




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