連日続く和平会議に、疲労を感じていないと言えば嘘になる。
昼夜を問わずに次々と報告が寄せられ、それらの報告は元帥が聞かなければどうしようもない。
五人居た元帥は、今や三人になった。
そのうちの一人はこのマウンテンに不定期滞在のため、実質二人で仕事をこなさなければいけなかった。
我らの仕事は報告を聞くだけでは無い。
時には指示を出し、自ら前線に立って動かなければならない時もある。

結果、報告を受ける仕事は俺が一手に引き受けなければならなくなった。
交代できる者はいない。
元帥である、俺がやらなければいけないことだ。

だが、さしも頑丈なバンパイアといえども、不眠不休で働き詰めれば限界は訪れる。
皆が見ている前で無様に倒れたことは俺の失態だ。
宣告まで喧騒に満ちていた元帥の間は人払いが行われ静まり返っていた。

(何という体たらくだ・・・・・・)

こんな風に休んでいる場合では無いというのに。

しかし自分の思考とは裏腹に疲労を刻みきった体は指一本動かすことすら億劫で。
溜息だけが漏れ出た。

倒れた後、気力だけで座り直したもののそれ以上動くことができず未だテーブルに突っ伏した格好のまま固まっていた。
棺で休むなり、せめて座ったままでも血を飲んで睡眠をとるべきだとはわかっている。
わかってはいるが、脳味噌の奥の方では「休んでいる場合じゃない」と訴えているのが聞こえる。
眠れない。
無理矢理に放出を続けるアドレナリンが、どうにか脳を活性化させようとしているかのようだ。

寝るに寝れず、起きるに起きれず。
これこそ無駄時間だと認識しても、状況は変わらない。

五分が過ぎ、十分が過ぎたころ、元帥の間が音もなく開かれたのを感覚で悟った。
誰だろうかと確認しようにも、やはり体は動かなかった。
どちらにせよ、ここを開けられるものは限られている。
自分か、アローか、バンチャ。

「あれぇ?ミッカーねんねの時間?」

・・・・・・それから、この幼い少女・ティーダ。
兄のブレダも開けられたはずだ。
今はどうやらティーダ一人で来たらしい。
ペタペタ足音を立てながら歩み寄ってくる。

「寝る時はお布団に行かないといけないんだよ?」

ティーダが問いかけるが、それに答えるだけの元気がない。
自分の背丈ほどもあるテーブルに楽々上ると、俺の頭をぺちぺち叩く。

「ミッカー?」

応えてやりたいのは山々だが、喉から声すら出なかった。

「ミッカー動かないねー?じゃあティダが子守歌歌ってあげるね」

少女は調子の外れた歌を、実に楽しそうに歌い出す。
自分が父親にしてもらったことをしようとしているのか、小さな手で頭をわしゃわしゃかき混ぜ始めた。
・・・・・・本人は撫でつけているつもりなのかもしれない・・・・・・。
いや、この子の父親の一人はあのガサツなバンチャだ。
撫でると見せかけて、こんな風にグシャグシャにかき回していても不思議はない。

そんなこんなで綺麗に撫でつけられていたはずの俺の髪の毛はあっちこっちにバサバサと綺麗に乱された。
流石に少しくらい怒っても良かったのかもしれないが、きゃっきゃと笑う声がなぜだか心地よくて。
高ぶっていた神経がだんだん緩んでいくのを自覚した。
眠りに落ちることを頑なに拒否していた脳が、とうとう根負けする。
うつらうつら、思考がまどろみはじめた。
今にも夢の中に落ちてしまいそうになるのをどうにかこらえ、言葉を紡ぐ。

「ティー・・・・・・」
「んー〜?」

「おやすみ」

「おはようじゃなくて?」

少女は俺の顔を覗き込みながら首を傾げた。
先ほどまで休息を拒否していたのはどこへやら。
なかなかいい夢が見れそうだと、何となくそんなことを思いながら意識を手放した。




ねんねの魔法






ハイヒールギャングのくもりさんが可愛いミカティダ描いてくれたので便乗して書いた!

ミカティダスハスハ!

推定265歳差!

これぞロリコンの鏡!!

くもりさん本当にありがとう!

こちらの作品はくもりさんのみお持ち帰り自由とさせていただきます。

2011/08/04





※こちらの背景は RAINBOW/椿 春吉 様 よりお借りしています。




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