直接言うのは・・・・恥ずかしい。
手紙をしたためるのは・・・・・改まりすぎてなんか嫌だ。
プレゼントを贈るのは・・・・・・何をあげればよいのか見当がつかない。
結論。
どうしたらいいのかわからない。
日ごろの感謝の念がないわけではないが、どうしてこう改まって向き合うと考えるとこうも気恥ずかしいのだろう。
柄じゃないから?
普段は照れ隠しに悪態ばっかりついているから?
だってしょうがないじゃん。
素直じゃないのは向こうも一緒なんだから。
「うぁぁぁぁっ!!悩むのやめっ!」
どうせ悩んだって結論なんかでないことはわかり切っているんだ。
そんなもの考えるだけ無駄じゃないか。
こういう時、僕ならどうする?
―――考える前に行動あるのみっ!!
思い立った勢いそのままに僕はテントを飛び出して一目散にクレプスリーがまだグースカ寝ているであろうトレーラに向かって駆け出した。
まるで討ち入りでもするかの剣幕に、途中すれ違ったシルク・ド・フリークの団員に引き止められそうになったけど思いっきり振り払ってやった。
僕は見た目はただの子供だけど、その正体は半バンパイア。
このシルク・ド・フリーク内で僕に力比べで勝てるのはそう何人もいやしない。
止めようったってそう簡単には止まらないさ。
猛ダッシュで駆け抜ければ、いかに広いフリークショウのキャンプ地とて数分もかからない。
あっという間に目的のトレーラーまでたどり着く。
扉に手を伸ばし。
一瞬。
ほんの一瞬だけ開けるのを躊躇し。
(怖気づくなっ!)
自らを叱咤して大きく扉を開け放った。
部屋に中に人影はない。
代わりに部屋の真ん中にでんっ、と据えられた大きな棺桶が嫌でも目に付く。
その中で何かが動く気配を感じた。
大方突然の来訪者に慌てて起き出したというところだろう。
数秒もしないうちにあの大きな蓋が横に滑り落ち、寝起きの不機嫌そうな顔の男がのっそりと緩慢な動きで出て来るに違いない。
そうわかっていた。
わかりきっていた。
だから僕はその棺桶が動き出すよりも早く、蓋の上にどしんと全体重を掛けて動かないように押さえつけてやった。
「・・・・ぬ・・・、こら!ダレン。どうせお前だろう。わかっているからそこをさっさと退かんか」
棺越しにくぐもった声が聞こえてくる。
寝起きのせいか少し苛立っているようだ。
しかしそんな程度で僕はこの場所を今すぐ退こうなどとは露ほども思わない。
内側からドンっ!と蓋を叩かれた振動が身体に伝わる。
そんなに急かされなくても用が済んだらすぐに居なくなってやるよ。
いいから黙って僕の言葉を聴きやがれ!
「・・・・・・一度しか言わないからね・・・・・・」
「・・・・・?なんだ・・・・?」
前置きをして、一度深呼吸をする。
あぁっ!くそっ!!
結局直接言っているのも同じじゃないかっ!?
自分自身にぶつけるしかない憤りを胸の中でぶちまけながら。
僕はありったけの声量でもって、叩きつける様に叫んだ。
ありがとう
(上手く伝わらないかもしれないけど・・・・・後は・・・・勝手に感じろっ!!)
最後の最後で素直になれないダレン。
きっと二人は言葉とかを超越した部分で分かり合っていると思う。
フィーリングで・・・なんかこう・・・・上手いこと繋がりあってるんですよきっと。
2010/08/31
※こちらの背景はSweety/Honey 様より、
赤師弟30のお題は赤師弟同盟 様
よりお借りしています。