木々の隙間から零れ落ちる赤い光。
まぶしくなって目を覚ますと、空が赤らんでいた。

(あぁ・・・・・・もうそんな時間か)

のろのろと起き出す。
身体は重い。
きっと野宿をしたせいだ。
道中見つけた洞穴に潜んだのでそれほど外界を気にすることなく眠ることは出来たが、それでも熟睡というには程遠い。
ふぁぁぁ・・・・・、と大きなあくびをしてから身体を伸ばす。
肩やら首やらがぼきぼき音を立てた。
ホテルのベットのなんと恋しいことか。
どんな貧相なホテルの安物のベットだとしても、こんな風に野宿をして地べたに直接眠るよりかは数倍、いや数十倍はマシのはずだ。

(今日こそはクレプスリーを説得してホテルに泊まろう)

僕は勝手に今日の目標を打ち立てた。
さて、とにもかくにもまずは朝食の準備をしなくては。
眠い目を擦りながら荷物の中から折りたためる鍋を取り出し、近くの川へと向かう。
ついでにタオルも持って行く。
水浴びをするには少し肌寒いけれど、身体を拭うこと位はしておきたい。

川は歩いて5分くらいのところにあった。
森の水源にもなっているようで、川べりには水を飲みに来たらしい動物の姿もあった。
水が綺麗な証拠だ。
しかし残念ながら僕が草木を押しのけガサリと音を立てると、皆一様に耳をピクリとさせて森の奥へと逃げ去ってしまう。
そんなに慌てなくたって、別に取って食いやしないのに。
僕らバンパイアはどちらかといえば、人間よりも動物的だ。
なのにどうして仲良くやっていけないのだろう。
わずかに落胆の色をにじませながら、動物のいなくなった川べりに一人腰を落とす。

光の増減と共に、少しずつ、森は生命の躍動を大きくしていく。
森の奥に潜んでいたものが顔を出し始めたかのようだった。
日の光はキラキラと水面に反射する。
赤くゆらゆら染め上げる。
その水面を割り入るように、タオルを沈め水で濡らす。
固く絞ってから体中を拭いた。
入浴には及ばないが、身体がすっきりした気がする。
最後にばしゃばしゃ音を立てて顔を洗った頃にはうつらうつらしていた頭もしゃきっと覚醒した。

(さぁ!今日も一日の始まりだ!!)

自分の両頬をぺチンと叩き、気合を入れた。
今日のご飯は何を作ろう。
材料が乏しいからあんまりたいしたものは作れないな。
パンがあったはずだから、それと一緒に飲めるスープでも作ろうか。
鍋にたっぷりと水を汲んで、僕は来た道を戻る。

戻った頃には大分日も落ちており、辺りは薄闇へと姿を変えていた。
暗くなりきる前にその辺で拾ってきた木の枝や木の葉を使って火を起こし、明かりを確保。
続いてバックに入れておいた残りの野菜などを使って簡単なスープを作る。
ことこと音が立ち、野菜にも十分に火が通った頃、匂いに誘われるようにしてクレプスリーがのっそり起き上がる。
空を見上げると、最後の一光が西の空に消えていくところだった。

「おはよう、朝だよ!」

暗闇へと変貌した森の陰鬱さに飲まれないよう、僕は出来るだけさわやかな声を張り上げた。



夕暮れ
(それは僕らにとっての朝焼けも同じで)






バンパイアの時間はココから始まる。
一日の始まりを告げる大切な時間です。
2010/07/14




※こちらの背景はSweety/Honey 様より、
赤師弟30のお題は赤師弟同盟 様 よりお借りしています。




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