「何だってお前はそんなに自分に自信がないのかねぇ?」

グラスに残っていたアイスコーヒーを一息に煽りながら、スティーブがぼやく。

「自信なんて・・・・・・持てるわけないじゃない・・・・・・」

可愛くもない。
綺麗でもない。
人より秀でた何かもない。
それでどうやって自信を持てばいいというの?
私は奥歯をギリリと噛みしめた。

「だから、いちいち卑屈になるんじゃねーよ」
「なってないっ!ただ、事実なだけよ・・・・・・」
「・・・・・・それが卑屈だっての・・・・・・」

グラスに残った氷をガリガリ噛み砕く。

「なら聞くわ。私は自分のどこに自信を持てばいいの?」
「あ?そんなの決まってんだろ」

こつん、と軽い音を立ててグラスをテーブルに。
ごく当たり前のことのように。
自然なことのように。
さらりと言ってのける。


「この俺を惚れさせたってだけで十分すぎるじゃねぇか」


・・・・・・この人は何を言ったのだろうか。
脳が言葉を処理しきれない。
ただの音としてしか捕らえられない。
ホレサセタってどういうこと?
誰が?
誰を?
わからない。
わからない。

「な・・・・・・何を・・・・・・」
「ばっか。聞き逃すなよな。俺はお前に惚れ・・・・・・」
「きゃぁぁぁっっぁっ!?い!言わなくていい!!二回も言わなくても聞こえてるっっ!!!!」

数秒遅れで脳が完全覚醒。
何がどうしてそうなったかはわからなくとも、彼が言った言葉の結論は理解した。

「何でそうなるのよ!?」
「なんでって・・・・・・惚れたもんはしょーがねーだろ」
「しょうがないって・・・・・・」
「そんなもんだろ?レンアイって」
「れん・・・・・・あい・・・・・・?」

よく知っていて、憧れすらも持っていた言葉が何故か未知のもののように思えて仕方がない。
思い描いていたものとかけ離れすぎている。

「ん?何お前。今まで男と付き合ったこととかないわけ?」
「わっ・・・・・・悪かったわねっ!」
「悪かねーよ。むしろ好都合?」

何それ!どういう意味!?

「まぁ、別に今すぐどうこうって話でもなし。俺を好きになれなんて強要するつもりもねーから安心しろ」

硬貨数枚をテーブルに置いて彼は席を立つ。

「しばらくはこの町に残るから、気が向いたら連絡くれよ」

後ろ手に手を振って、行ってしまう。

このまま、行かせていいの?
彼の言いようじゃぁ私が連絡しない限りきっと逢うこともないだろう。
それで、いいの?
また知らない間に一人街を出て行ってしまう。
本当に、いいの?
こんな私に好意を寄せてくれた人を、こんな形で失っても、本当にいいの?

花占いは示した。

こんな私を好きになる人なんていない、と。
こんな私を好きになってくれた人を私は愛せない、と。

でも、彼は。
スティーブは。
こんな私を綺麗だと言ってくれた。
好きだと、示してくれた。
占いを覆してくれた。
ならば私も、覆せるだろうか。
あの人を、好きになれるだろうか?

あぁ!早くしなければ行ってしまう。
今言わなければきっともう二度と勇気を振り絞ったりなんかできないに違いない。
ほんのちょっとでいい。
こっちを見て?
私の背中を後押しして?
もう一度、あなたの言葉が嘘ではなかったと確かめさせて?
お願い!
お願いっ!!

(だいたいっ!どこに連絡すればいいかだって貴方言ってないじゃない!?)

「・・・・・・っ!ス・・・・・・スティーブっ!!」

思ったときには、もう声を張り上げていた。
頭で考える前に体が動いてしまうのはきっとシャン家の遺伝子のせいだわ。
でも今はそんなことどうでもいい。

早く・・・・・・

答えたんだから早く振り返りなさいよスティーブ!!





どうしたら振り向いてくれる?
(はじめから、そっちしか向いてねーよ)






アニーが吹っ切れました。

これからはスティーブとラブラブしていればいいと思います。まる。

ってなわけで、こちらも診断メーカーの3つの恋のお題より

お題3つ目タイトルそのまま「どうしたら振り向いてくれる?」でした。

スティアニいいです。おいしいですもぐもぐ。

たぶらかスティーブにキザ男スティーブけしからんです本当。

2011/6/03





※こちらの背景は ミントblue/あおい 様 よりお借りしています。




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