一枚、一枚、花びらが散っていく。
むしり取られた花が、地面に落ちる。
「・・・・・・好き・・・・・・嫌い・・・・・・好き・・・・・・」
はじめてしまえば殆ど機械作業だ。
端から順々にはがされる花弁は、まるで私の心内をさらけ出すかのようで胸が痛い。
こんな自分が嫌い。
自信がない自分が嫌い。
可愛くなれない自分が嫌い。
嫌い、嫌い、大嫌い。
けれどどこかで誰かに好かれたいと思っている。
誰にも彼にも好かれる、そんな女じゃなくていい。
たった一人でいい。
私を一人前の女だと認めて好いてくれるそんな人が現れたらいい。
こんな私を愛してくれる誰かが・・・・・・。
そして、そんな人を私が好きになれたら・・・・・・。
この身に巣くう劣等感とも決別出来るかもしれない。
その先に、幸せというものが待っているかもしれない。
儚い願いを乗せて花弁をちぎる。
私を好きになってくれる人が・・・・・・現れる・・・・・・現れない・・・・・・。
私はその人を好きに・・・・・・なれる・・・・・・なれない・・・・・・。
花占いなんかに縋ろうとしている私が・・・・・・好き・・・・・・嫌い・・・・・・。
残り少ない花弁。
繰り返される短かな単語。
「好き・・・・・・嫌い・・・・・・好き・・・・・・」
気付けば、残りは後一枚。
それが結論。
こんな私を好いてくれる人なんか現れない。
好いてくれた人を、私は好きにならない。
惨めなことをしている私を・・・・・・愛せない。
さぁ、最後の死刑宣告。
「・・・・・・嫌い・・・・・・」
ぽとりと、すべての花びらが地面に落ちた。
深い深いため息も、吸い込まれていくようだった。
「『好き』」
「えっ?」
唐突に、背後から伸びた誰かの腕が花弁の無くなった丸裸の花の茎をぽきりと折った。
「だろ?アニー」
聞き覚えのある声に慌てて振り返る。
もうずっと前に見たきりだった銀糸の髪が目に飛び込む。
「スティ・・・・・・ブ、なの・・・・・・?」
「俺みたいなイカした男が世界に二人もいると思うか?」
よぅ、なんてまるで昨日もあったかのような気楽さでスティーブは答えた。
けれどそんな気軽さとは裏腹に、目の前のスティーブは記憶の中の彼とは変わっていた。
体つきもとてもがっしりしていて、身長だってうんと高くなっている。
彼はもう少年なんかじゃない。
立派な男性になっていた。
途端に自分のことが恥ずかしくなる。
伸びない身長。
変わらない体つき。
幼いままの顔立ち。
せめて自分を着飾るセンスすらも、私にはない。
いつまで経っても垢抜けない自分が心底イヤになる。
「・・・・・・驚いた・・・・・・だって・・・・・・急に現れるんだもん・・・・・・」
まともに彼の顔を見られない。
視線が地面から上に上げられない。
劣等感にまみれるのは、もうイヤだった。
「俺も驚いたさ」
私の手を、すくい上げる。
「お前がこんな綺麗になっているなんて思わなかったよ」
──チュ
指の付け根に落とす、口づけ。
「すき、きらい」「好き」
(嫌いなわけねーだろばーか)
診断メーカーによってはじき出されたスティアニに3つの恋のお題より。
その@ すき、きらい、すき でした。
まともなスティアニはじめて書いた・・・・・・・・・。
あーしあわせにしてやりたい幸せにしてやりたい!
がんばるんば!
2011/06/01
※こちらの背景は
ミントblue/あおい 様
よりお借りしています。