沈むように堕ちていく。
どこまでも続く深い闇だ。
どんなに目を凝らしても底なんて見える気がしない。
いや、見えないのか。
それとも、そんなものが元から存在しないだけなのか。
ソレすらわからない。
ただただひたすら堕ちていく。
もはや堕ちているのかどうかすら怪しいとさえ思う。
僕は流れにひたすら身を任せる。
一抹の不安が無いといえば嘘になる。
自分はどこへ行ってしまうのだろうか。
この先に、何が待っているのだろうか。
想像したところで分かるはずも無い。
だが考える。
もしかしたら、酷く悲しい思いをするかもしれない。
もしかしたら、立ち直れないくらい傷つくかもしれない。
なのにどうしてだろう。
僕はこの現状を打開しようとは思わない。
もしかしたら、輝くような日々があるかもしれないから?
もしかしたら、泣きたいくらい嬉しいことがあるかもしれないから?
なんて不確かで不安定なものを信じているのか。
何一つ確定されているものなんて無いじゃないか。
幸にも不幸にも転がるといえば聞こえはいい。
だが、確立が五分五分だとは限らない。
世の中、そんなにフェアには出来ていないって僕は知っている。
幸せな奴はいつまでも幸せを享受するし。
不幸な奴はどんなに頑張ったって幸福の方から尻尾を巻いて逃げてしまうんだ。
きっと今の僕は相手に手札を見せたままポーカーをしているようなもの。
勝つも負けるも相手次第。
采配はとっくの昔に決まっている。
勝敗の行方を知らないのは僕ただ一人。
僕だけが結果を知らずにドキドキしている。
まるで喜劇。
ただ一人舞台の上であたふたと騒ぐのを見て観客は笑うだろう。
なんてバカなやつだ。
あいつは何もわかっちゃあいない。
本当に滑稽だ。
誰か教えてやれよ。
とんだピエロだ。
ヒーローにでもなれるつもりでいたのか?
ってね。
ヒーローになんかなりたくないよ。
僕は笑われるだけの道化で構わない。
悲劇になるくらいなら、笑っていてくれた方が何百倍もマシだ。
泣き顔は、もう見たくない。
あんなもの、もうこりごり。
後悔をしたくないわけじゃない。
だけれども、どうせ泣くなら笑い泣きをして欲しい。
僕はどう思われたって構わないから。
悲しい雨は降らせないで。
感情を振り払うように、どんどん僕は堕ち続ける。
時に冷たく、時に温かかった。
しょっぱい味もしたし、甘い香りがした時もある。
次は何があるだろう。
手探りで進む現状は怖くもあるが、気持ちいいとも思う。
心のどこかで『大丈夫』と何かが背中を押す。
根拠も何も無い不思議な自信。
得体の知れない何かは、早く早くと僕をせき立てる。
待て待て、そんなに急かすな。
僕はまだこの不思議な感覚に溺れて居たいんだ。
ココは怖いが、心地いい。
まるで母親のお腹の中にいるように、頼り無くふわふわしているようでしっかりと守られている。
そんな感じだ。
でももう終わり。
ココが闇の終着点。
闇の底じゃぁないらしい。
何も見えないのに、どうしてだかソコに扉があるとわかる。
変なの。
見えてるじゃないか。
ならココは暗くは無いのかもしれない。
僕がそう思っていただけで、そうじゃなかったのかもしれない。
気づけるのは最後の最後で、気づいたときにはもう遅い。
今になってはもうどうだっていい事になっている。
誰に頼まれるわけでもなく、僕は扉に手を掛ける。
鍵は掛かっていない。
ギィ、と軋む音がする。
扉の向こうからは光が溢れた。
目が、眩む。
光の中で誰かが手招きしていた。
誘われるように僕は手を伸ばす。
見えないけれど、手を伸ばす。
温かいところに向かって、手を伸ばす。
指先に触れた、あたたかなもの。
掴もうとしたけれど、ソレはするりと僕の手から逃げてしまった。
僕はあえて追いかけはしなかった。
そのうちひょっこり向こうからやってきてくれる気がしたんだ。
だから僕は焦らずゆっくり歩き出す。
自分のペースで。
堕ちるんじゃなくて。
二本の足で。
地面を踏みしめる。
一歩ずつ、確かに歩く。
そうしたら、視界がぱぁっと開けたんだ。
目を開けた。
カーテンの隙間から、光が差し込む。
窓の外の空気はきっとまだ冷たい。
だけど、
ガラス越しに感じる光はびっくりするくらい温かくって
春の足音がすぐそこに聞こえた。
はるたちて
立春なので、春の始まり的なものを書いてみた。
それをダレンがクレプスリーの死後から立ち直るまでの過程とからめるとこうなった。
雰囲気のアレ。ポエム的な。
堕胎とか、発芽とか、そういう感じ。
冬から春への移り変わりってこんな感じだと思うの。
下降・停滞から進行・上昇への変化を書きたかった。
わかりにくくてさーせん。
2010/02/04
※こちらの背景は
NEO-HIMEISM/雪姫 様
よりお借りしています。