That would be telling
ねぇ、パパ。
ねぇ、ママ。
私本当は知っているの。
あの日、スティーブに何が起こったのか。
どうしてお兄ちゃんが死んでしまったのか。
私たち家族が何故こうなってしまったのか。
夜になって、おやすみと言って私の頬にキスを落とし、二人が寝室に消えてから聞こえてくるのはいつも決まったうわごと。
「ダレン・・・・ダレンどこへ行くの・・・?そっちはダメよ・・・・あぁ・・・・・どうして・・・・・・どうして・・・・・」
すすり泣く声を聴きながら、私は頭まで毛布をかぶって夜を明かす。
長い長い夜が明けるのを待つ。
何度も誘惑が頭を過ぎる。
言ってしまおうか。
真実を二人に伝えてしまおうか・・・・・。
あぁ、ダメだわ・・・・やっぱり言えない。
お兄ちゃんが、それだけじゃなくダリウスまでもがバンパイアだなんて言える訳がない。
二人は気が触れてしまうに違いないわ。
出来ることならこのまま世界から消えてしまいたい・・・・・。
あの日、あの時、お兄ちゃんがそうしたように。
そうすれば楽になれるかしら。
こんな思いから開放されるかしら。
秘密を誰かと共有し、生きていけるかしら。
・・・・・・わかってる。
わかっているのよ。
お兄ちゃんが決して楽ではない生活を送っていたことくらい、体中の傷を見ればわかるわ。
それでも考えてしまうの。
私もこの子と一緒にバンパイアの世界に足を踏み入れてしまおうかって。
ダリウスと二人、いつかはお兄ちゃんと三人で暮らせれば、それはきっとひとつの幸せに違いないわ。
でも
私はそれを選択できない。
「アニー!急にどうしたんだ?」
「まぁ!?貴方が連絡もなしに来るなんて、何か困ったことでもあったの?」
あぁ・・・・・・パパ・・・・ママ・・・・・
私には出来ない。
あの時
どれだけ悲しい思いをしたのかを知っているから。
あの時のあの感情を私自身が知っているから。
息子、孫に続き私までもが同じ道を辿ってしまったら、二人はどれだけ悲しむか・・・・・・
容易に想像できる。
あまりにも容易くわかってしまう。
だから出来ない。
その道を辿るわけにはいかないの。
「娘が親を訪ねるのに許可が必要かしら?
心配しないで。ちょっと二人の顔が見たくなっただけだから。
ほら!ダリウスもこんなに大きくなったのよ?」
私はまた嘘をつく。
あの日と同じに。
真実を知っていながら、口を閉ざす。
悲しませるだけの残酷な嘘をつく。
翌日
二人の悲痛な叫び声があがる。
やっと忘れられたはずのあの日の光景がフラッシュバックする。
お兄ちゃんが死んだときと同じように、ダリウスは二階の窓から落ちて死んだ。
That would be telling ⇒ それは秘密だから言えない の意。
12巻終了後のアニーとダリウスの境遇。
ダリウスがバンパイアになるときもやっぱりあの方法を使うのだろう。
アニーは両親のために人間で居続けることを選ぶんだろうなってのを妄想してみた。
何も知らずに死を押しつけられる側にいるのと
真実を知って死を押し付ける側になる両方の苦悩を背負うアニー。
どっちにしてもしんどいことには変わりない。
2009/11/03
※こちらの背景は
ミントblue/あおい 様
よりお借りしています。