Sheathe the sword



ある一つのことを思いつく。
それは考えれば考えただけ単純なことで。
思えば思うほど、残酷な行為。
それでも、僕たちは実行しなくてはならなかった。
創り上げられたレールから外れるために。
命の総てを掛けてでも、この生に意味を与えるために。

迷っている暇はない。
運命は待ってはくれないんだ。

苦渋の決断を、僕は下した。



タイニーを出し抜くために搾り出した皮肉。
本当はそんなこと思ってない。
「お前と本当の兄弟だったら・・・」なんて話をしたお前を僕は知っているから。

救いたいと思った。
出来ることならこれ以上傷つけずに。
でもそれは運命が許さない。
僕等の存在を世界が許さない。
僕等の命はここで終わりにしなければならない。

何度、僕は君を傷つけるのだろう。
ごめん。
ごめんな?

「おい、スティーブ、お前の言うとおりだよ。
僕はクレプスリーと手を組んでお前のかわりにまんまとクレプスリーの手下におさまった。
クレプスリーと一緒に散々笑わせてもらったよ」

心にもない皮肉。
それでもお前を怒らせるには十分だろう?

怒りに我を忘れろ。
握り締めたナイフを絶対に手から離すな。
これが僕等が運命に打ち勝つための最後の鍵なのだから。
鍵穴の位置は、わかっているだろう?
目の前にある。
迷わずに突き立てろ!

「やめろ!」
「いけません父上!手出しは無用です!!」
「どけ!このたわけはスティーブに自分を殺させる気だぞ!」

聞こえる。
運命が慌てふためく声が。
いい気味だ。
どうだ、お前の思い通りにならないこの世界は。
さぞかし面白くないだろうな。

さぁ、お前の茶番はもう終わりだ。
運命なんかに手出しはさせない。
スティーブとともにこの川に身を沈めれば僕の勝ちだ。

「タイニーの・・・・・運命は・・・・これまでだ・・・」

怒りに我をなくしたスティーブと抱き合うように橋から身を躍らせる。
ごめんな。
巻き込んでしまって。
折角人としての情を取り戻したのに、こんな形で終わらせてしまうなんて・・・。
お前はまた、僕のことを憎むんだろうな。
憎しみのうちに死んで、あの世ですら僕を憎むんだろうな。
本当に、ごめん。
ごめんな。


「これで・・・・いいんだろ?」


(っ!?)

あぁ。
そうだ。
僕たちは名コンビだったじゃないか。
言葉なんて要らない。
目を見れば全て通じる。

(スティーブ・・・お前でよかった・・・)

お前に掛ける最後の言葉が謝罪じゃなくて本当に良かった。

(ありがとう)

激しい水しぶきをあげて、僕たちは川底深くにその身を沈めた・・・・・。

せめて、この冷たい水の中でもう一度初めからやり直そうか。
大丈夫。
僕たちはまた逢える。
必ず、一緒になれる。
だって僕らは









Sheathe the sword ⇒ 剣を鞘に収める の意。

過去日記感想文の再利用。

コインの裏表と表現してたけど、ホントは背中合わせなんかじゃない。

お互いが剣でありお互いが鞘であり。

己が存在するためにいなくてはいけない存在なんだと思う。

どちらかが欠けても存在できないわけじゃないけど、上手くは生きられない。そんな関係。

漫画版のスティーブ補正は神すぎる。

スティ好きにならざるを得ない。gj神新井!

2009/10/12





※こちらの背景は ミントblue/あおい 様 よりお借りしています。




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