Repeat oneself
(タイニーは言った、起きてしまったことは変えられない。でも、その出来事に関わった人間は変えられる・・・・)
(お前の魂を自由にするため、僕にはまだ出来ることが残ってる。後は僕次第・・・・。エバンナはそう言った)
(何で僕を生き返らせたのか・・・・・)
(なんでこんな不自由な身体になってまで、この日に戻されたのか)
(これが正解かわからないけど・・・・・・)
(今、僕の出来ることをやってみるよ)
僕の記憶が正しければ、スティーブとはぐれた後の僕は一度人の波に押しやられどこかの小部屋に閉じ込められた。
そして、その部屋には階段があり、スティーブを連れ帰るために駆け上がりバルコニーに飛び出したはずだ。
バルコニーに抜ける扉の直前に僕は身を潜める。
そろそろのはずだ・・・・・。
「エースのシャン様ただいま参上!!」
来た!
不安をかき消すように足を音をわざと立て、一人の少年が駆けてくる。
あの日の自分だ。
これから起こることを何も知らない、無垢だった頃の自分。
大丈夫。エバンナが与えてくれたこのチャンスを無駄にはしない。
ひどく怯えさせて逃げ出させればいい。
口では大きなことを言っているが内心逃げ出したくて仕方ないことくらいわかっている。
だって、君は僕なんだから。
駆け上がってくる君にタックルを食らわせて階段から引きずり降ろし、睨みのひとつもおまけしてやればいとも簡単に逃げ出すことだろう。
さぁ足音が近づいてきた。
もう少し・・・・・・・もう少し・・・・・・
よしっ!今だっ!!
「我が輩に何か用かな?少年」
(っ!?)
僕が君に飛びかかろうとした瞬間、声が聞こえた。
バルコニーの下で既に二人が対面したんだ!
聞き間違えるはずもない。
声の主は、ラーテン・クレプスリーだ。
あの人の声は、雷に撃たれたかのような激しい衝撃となって僕の身体を震わせた。
刹那の間に彼と歩んだ15年の思い出が記憶に鮮明に蘇る。
ケンカしたこと。
初めて褒められたこと。
お互いを認められたこと。
かけがえのない存在になったこと。
沢山笑って、沢山泣いた彼との短くて長い15年間のこと。
時には師として
時には友として
そして
時には親として
常に共にあり続けた輝かしい日々。
あの時がなかったことになるなんて・・・・・
僕以外の誰かと歩むなんて・・・・・・
(・・・・嫌だ・・・・・そんなの嫌だ・・・・・・)
あんたの横で笑っているのは僕がいい。
あんたのこれからの人生を共に歩くのは僕じゃなきゃ嫌だ。
他の誰かなんかに渡したくない。
(・・・・・ごめんっ・・・・エバンナ!!)
僕には出来ない。
あの日の僕を止めることなんてしたくない。
だって僕は、クレプスリーと共に生きる未来を知っているんだ。
もう一度あの人と生きたいんだ・・・・っ!
伸ばしかけた手を引っ込めるのと、あの日の僕がバルコニーに飛び出すのはほとんど同時だった。
階段は暗がりだったので君は僕の存在に気がつかなかったはずだ。
この後、僕はクレプスリーがバンパイアで、スティーブがバンパイアになりたがっていることを知る。
僕はスティーブに恐怖し、スティーブは僕を疑いだす。
僕はマダム・オクタを盗み出し、スティーブはマダムに襲われる。
そして
僕は半バンパイアになる。
もう止まらない・・・・・・・・物語は動きだした・・・・・・・。
Repeat oneself ⇒ 同じことを繰り返す の意。
完全原作否定とか。・・・はは!
リトピダレンがダレン少年を止めない可能性も無くはないはずなんだ。
この後、原作どおりにフードに縫い付けられた日記に気づいて
半バンパイアになりながらもタイニーの企みを阻止するように立ち回るとか。
どおっすか?そんな展開!
2009/11/03
※こちらの背景は
ミントblue/あおい 様
よりお借りしています。