Once upon a time,
今日はどんな話をしてあげようか?
そうだなぁ。
こんな話はどうだろう。
ある所にクモが大好きな男の子がいました。
男の子は親友と一緒にシルク・ド・フリークという世にもめずらしいショーを見に行きました。
ショーはとても素晴らしく心躍るものだったのですが、この後二人の運命を分ける事件が起こります。
男の子がショーに出ていたクモを盗んでしまったのです。
出演者の男、クレプスリーがしていたようにクモを自分で思いのままに操ろうとしたのです。
しかし、物事というものはそう上手くは運びません。
クモが突然親友を襲ったのです。
男の子は親友を助けるためにクレプスリーと取引をすることになりました。
クレプスリーの正体はバンパイアで、男の子はその手下にならなくてはなりませんでした。
一度は断った男の子でしたが親友のために取引に応じることにしました。
お陰で親友の命は助かりましたが、男の子は街から離れなければならなくなったのです。
町を離れてから、男の子はクレプスリーとの二人旅を続けました。
手下になったので男の子もバンパイアになったのです。
でもまだ完全なバンパイアではありません。
半分人間、半分バンパイアです。
バンパイアの血が身体に流れている以上、男の子はバンパイアの生き方を学ぶ必要がありました。
人間の血を飲まなくては生きていけないのです。
そうしなければ死んでしまう危険もありました。
しかし男の子には人間の血がどうしても飲めませんでした。
そんなことをするのは化け物のように感じたからです。
無理矢理にでも飲ませようとするクレプスリーのことを心から憎みました。
男の子は死ぬつもりでした。
人間を捨てるくらいなら死んだほうがマシだと思ったのです。
ある夜、かつてないチャンスが舞い込みました。
クレプスリーを殺せるチャンスです。
男の子がたった一言念じるだけで殺せる状況でした。
相手の命は男の子の意のままだったのです。
ねぇ!どうしたの?男の子はクレプスリーを殺しちゃったの?
・・・・・・いいや。男の子はそうはしなかったんだ。
男の子は思いとどまりました。
男の子はクレプスリーのことが好きになっていたのです。
バンパイアにしたことは許せませんでしたが、本気で自分のことを考えてくれているとわかったからです。
それから男の子はクレプスリーを人生の師として尊敬するようになりました。
クレプスリーも男の子を我が子のように大事に、時には厳しく指導しました。
二人はとても仲が良くなりました。
ケンカや言い合いは耐えなかったけれど、まるで本当の親子のように周りからは見えていました。
男の子は本当に本当にクレプスリーが大好きになったのです。
それから――――
それから、どうなったの?
それから・・・・・・・・二人は何時までも何時までも幸せな親子であり続けたんだ。
なんていってもバンパイアは長生きだからね。
何百年も生きれるくらいなんだ。
二人でいろいろな国を回った。
二人でいろいろな所へ行った。
いろいろなものを見ていろいろなことをした。
輝くような毎日を二人でおくったんだ。
それは幸せな日々だったんだよ。
「・・・・パパ・・・・・?どうして泣いているの・・・・・?」
「なんでもないよ・・・・・なんでもないんだ・・・・・・」
二人が幸せになれたのだと思ったらすごくすごく嬉しくなっただけなんだよ。
せめて、物語の中で位は君たちに幸せになってほしい。
あの人と死に別れるような、そんな悲しい結末はいらない。
ただただ、この本の中では笑っていてほしいんだ。
なぁ?
今お前は笑っているか?
もう一人の僕・・・・。
Once upon a time, ⇒ むかしむかし の意。
12巻終了後ダレンとその息子(捏造)でした。
絵本風に読み聞かせするならあのエピソードはカットすべきだよね。
絵本、ハッピーエンドの法則。
元がバットエンドの話でのハッピーエンド捏造って一番泣けると思ってる。
結末を知っているからこそ笑っている時にものすごい泣けてしまう。
2009/10/09
※こちらの背景は
ミントblue/あおい 様
よりお借りしています。