Answer back
「だからっ!そうじゃないって言ってんだろっ!!」
(・・・・・また始まった)
各々潜り込んだ布団の中でそう思った。
毎晩繰り返される二人の言い争い。
今やこのシルク・ド・フリークの日常的な光景となっていた。
当初は冷静沈着なラーテンが子供相手に声を荒げるなんて一体どうしたことか!と心配されたものだが、毎日続けば心配するのも馬鹿らしくなってくるというものだ。
内容はどうでもいいような、もはや痴話げんかの粋。
(まったく、毎晩毎晩飽きもせずよくやるよな・・・・・)
誰もが思いながら布団を頭までかぶりなおす。
今日も今日とて、二人の罵声が団員の快適な睡眠時間を妨害していく。
「――-何を言っておる!今さっきお前が言ったのではないか!」
「何であんたはいつもいつもそんなひねくれた捉え方ばっかりするんだよっ!」
「我が輩は言われた通りにしたぞ」
「これのどこが言った通りなんだよ!?あんたその目見えてんの?」
「まったく!文句ばかり言うのはこの口か?え!?」
「!!!暴力反対!!!」
「暴力なものか!これは教育、躾だ!手下の恥は師の恥だということがわからんのか!」
「なら喜んで恥をかいてやるよ!!」
「あー言えばこー言う!なんでおまえはいつもいつも・・・・・!!」
「「「「うるさーーーーっっい!!!!!」」」」
団員の叫びがテントにこだまする。
シルク・ド・フリークの夜はまだ明けない。
「トール。今日こっちで寝ていい?」
「エブラか。構わないぞ」
「向こうのテントうるさくって寝られやしないんだよね」
「またあの二人だな?」
「そ。いつもの通り。飽きもせずによくやるよね」
「けんかするほどなんとやら、だ」
「ふーん。俺は素直に勝るものは無いと思うけどね」
「・・・・・・そうかもしれんな」
「じゃ、おやすみ。トール」
「あぁ。いい夢を・・・・」
早々に規則正しい寝息を立てるエブラの傍らに座り、緑色の長い髪を手で梳きながらトールは一つため息をこぼす。
「言い合いは相手に自分を理解して欲しいという気持ちの表れ。
私としてはうらやましい限りなんだがな・・・・・・」
反抗期の子供に手を焼く親が居る傍ら、
反抗期の無い我が子に頭を悩ませる親も居た。
やっぱり。
シルク・ド・フリークの夜はまだまだ明けそうにない。
Answer back ⇒ 口答えする の意。
赤師弟には口げんかが耐えないと思う。
黒師弟は、してみたいと思ってるんだけどトールは先が見えちゃうし、
エブラはトールに全幅の信頼を置いているから口げんかをする機会が無いんだと思う。
2009/09/16
※こちらの背景は
ミントblue/あおい 様
よりお借りしています。